運命なんて信じない８ (ページ22)

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自宅へ戻った。
手の震えはまだ収まらない。

舞香が癌？まさか？
しかもすい臓癌の可能性？
早期発見が難しい、すい臓癌？
そんなまさか。

腫瘍マーカーが高くても、癌てはないこともある。
震える手で学術書を開く。
だめだ、何も頭に入ってこない。

もし、すい臓癌だったら？
そしたら舞香はどうなる？

一人でいると最悪のことばかり考えてしまう。

俺は不安を消すために
舞香の病室へと向かった。

Knock Knock

『舞香？』

「どうぞー。」

『起きてて大丈夫？』

「大丈夫よ。輸液して元気になったもの。」

『そっか。なら、良かった。』

「ほんと、ごめんなさい。」

『これに懲りてちゃんと食べるように。な。』

「はーい。」

無邪気な舞香の笑顔が胸に響く。

『そう言えば凜がさ、舞香の手技がすごかったって言ってたよ。』

「そう？私、凜が見学するのオペ前に知ったの。だから余計に緊張したのかも。」

『それはあるかもな。いい勉強になったってさ。』

「良かったぁ。仕事してる私を見てくれて。凜がせっかく心臓血管外科に進んてくれたから、少しでも学んでくれたらなって思ってたの。私の後を引き継いでほしいかななんて。」

『舞香の後？』

「そう。遥香は蓮くんの後を追いかけて、今は立派な女優さんでしょ？だからね、羨ましかったの。凜が心臓血管外科って言った時、嬉しかったなぁ。あ、やっと私？って。」

『そんなこと思ってたなんて知らなかったよ。』

「何か蓮くんにライバル？みたいに思ってたのかも。ふふっ。」

『ライバルじゃないだろ？俺たちはずっと隣にいるんだから。』

「そうね。」

『俺もここ、泊まろっかな。無駄に広いし。』

「それはだめよ。ご飯は一緒に食べて？」

『ご飯？』

「うん。蓮くんがいたら食べられるかもしれないし。ね？」

なんて可愛いこと言うんだよ。
俺がいて食べられるなら、ずっと側にいるから。

『おし！じゃあ俺のご飯、何か調達してくるわ。』

「じゃあ、私のデザートもね。」

『おっけ。待ってて。』

「いってらっしゃ～い。」

舞香の病室を後にした。
こんなやり取りが出来なくなるのか。
まだ決まった訳ではない。

でも、不安は拭えない。
腰の痛み、膵アミラーゼの上昇
そして腫瘍マーカーの上昇。
全てが癌であると言っているように思えた。

もし、本当にそうならば
俺は一体、どうすればいいのだろうか。