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潤が受けた電話はAの執事からだったらしく、
『A様も熱を出されたようです』との報告にいてもたってもいられず…
「若。それくらいにしといたらどうですか?」
「あ?もっといるだろう?熱があっても好きな物なら食えるだろ?」
「健康な時でもケーキは食べられてもひとつ、ふたつだと思いますが…。」
花屋に寄り、フルーツ屋に寄り…
今はケーキ屋。
潤の小言を無視してケースの端から端まで買って、小箱にクマのマスコットがついてる焼き菓子の詰め合わせを買い…
あ、うさぎもあるじゃねぇか…
これも買って…。
「デートの度にもあれこれ買って…一体どれだけ物を買い与えるおつもりですか…。」
「ん?どんだけって…そうだなぁ…Aの物全てが俺の買った物になるまでかな。」
兄貴の趣味の物ばっかで気に入らねぇし。
「はぁ…。」
ワザとらしい大袈裟なため息を俺に向かって吐き、俺が手にできない商品をレジまで運ぶ。
Aは俺の地位とか金とかに目が眩んだわけでもないし、元々幼い頃は一般的な育ちで両親の教育の賜物か金銭感覚はしっかりしていてむやみやたらに物をねだったりはしない。
だからこそ余計に甘やかしてやりたくなるんだよ。
わかってないね?潤くんは…。
・・・Aへのお見舞いの品を持ってやって来た二宮家。
早くAに会いたくて荷物をどう運ぶか四苦八苦してる潤を置き去りにして、玄関に向かう。
玄関先で対応したのは久々に見た兄貴のメイドで。
その表情が以前よりも優しく柔らかくなった気がして…
「アホ兄貴と上手くいったんだ。」
揶揄うようにニヤリと笑ってそう言ってやった。
「なっ//」
「ははは。お前、嘘つけないタイプだな。」
「櫻井様…ご勘弁を…。」
「あぁ。じゃぁ潤が荷物を持ちきれねぇみたいだから手伝ってやって。」
「はい。かしこまりました。」
俺から逃げるように潤がいる車まで走って行った。
二階に上がり、Aの部屋のドアをコンコンとノックするとカチャリと向こうからドアを開けたのは案の定、執事で。
「櫻井様でしたか。その後お加減はいかがですか?」
「俺はすこぶる良好だ。俺の事よりAはどうなんだ?」
「お嬢様は今、お休みになっておられます。」
「そうか…。俺がついてるからお前休憩したらどうだ?どうせ兄貴に言いつけられてつきっきりだったんだろ?」
俺がそう言うと苦笑いを浮かべ頷き、『お言葉に甘えてさせて頂きます』と部屋を出て行った。
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作者名:しおなな | 作成日時:2018年4月17日 19時