９３ 〜N〜 ページ13
「Aの様子は？熱は微熱に下がったと智に聞いたが…。」
ジャケットを山岸に預けて、ソファに向かいながら晩酌の用意をする相葉に聞く。
「はい。」
俺と目を合わせない相葉に違和感があって、チラリと山岸を見るとやはり曖昧に笑って視線をずらす。
「おい。Aに何があった。」
ジッと相葉を見据えて威圧的に聞くと、相葉が視線を合わせて苦笑いをしている。
「お嬢様はお休みになられております。」
「んな当たり前の事なんか聞いてねぇんだよ。」
体調の事もあって深夜のこの時間に部屋に訪ねる事はしなかったが…。
ソファに向かってた足をドアに方向転換し…
「和也様！」
慌てた山岸の声が俺を引き止める。
その声が何かあったと物語っていて、後ろを振り返ると、相葉が山岸を制し…
「どうぞ、お嬢様の様子をご覧になって来てください。」
なんだよ…
あんな何かありました〜って顔してたと思ったら、１８０度態度変えやがって。
わかりやすく扱いやすい執事だと思ってたけど、一癖も二癖もありやがる。
スタスタと二階のAの部屋に向かい、寝てると思ってノックもせずにドアを開けた。
必要最低限の間接照明があるだけの薄い部屋だけど、部屋の中は把握してるし目が慣れればどうって事ないと、ベッドに向かって一直線に歩く。
寝てるAを起こさないようにとそっと近づき…………
「あ？！！」
なんでコイツがここで寝てんだよ！！
布団がいつもより妙にこんもりしてるなぁと思ったらアホ御曹司がAを抱きながら眠ってやがる！！
AもAで御曹司の胸に収まって幸せそうな寝顔を浮かべてる。
あぁぁぁ〜…
もうダメ…
和くん死んじゃう……。
あまりの衝撃に立っていられなくて、その場に頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「和也様。」
背後から寝ているAを気遣った小さな声が聞こえたけど返事なんてする気力がない。
「お、お前…。こんな事…俺は許した覚えねぇぞ。」
あぁ…なんとも情けない声だ…。
体調もあるし一線は越えてないだろうけど俺に瀕死のダメージを与えるだけの衝撃はあった。
「和也様。お嬢様は和也様と山岸の関係に気づいておられます。」
「はっ？！」
さらなる衝撃に…
俺…死ぬの…？
「なのでもう頭ごなしに反対はできないでしょうね。反対すればするほどお嬢様は反発されるでしょう。」
死亡確定だ…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
