62.打ち上げ ページ23
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寸劇が終わった彼らは、一日目の仕事を全て終えたようなものだ。クラスに仕事がある者以外はお菓子を食べたり、談笑したりとのんびりとした時間を過ごしていた。
和気藹々とした雰囲気の中、一人静かにお茶を飲んでいる奴が居た。柏木だ。
「柏木お疲れ! あっ違った、薫姫か」
「前は女装押しつけてごめん、でもやっぱり姫はお前しかできないと思う」
そうからかうように同期の吉野と佐藤から言われても、柏木は「はは」と力無く笑うだけだった。
そんな彼を見て、流石に女装は精神的に来てんのかなと思った二人は、別の話題を持ち掛けた。
「忘れかけてたけどさ、会長ってイケメンなんだな」
「それな、客席からのキャーって叫び声凄かったし」
会長の話になると、柏木は大体彼を悪く言う(基本柏木はすぐ暴言を吐くし誰に対しても冷たい。だからこそ一応は年上の、しかも生徒会長にそういう事ができるのだが)。
この時も二人は彼に毒を吐いてもらって、ああ普段の柏木だと安心する筈だったのだが、その期待も虚しく、柏木は何か言うどころか黙り込んでしまった。
これは駄目だと思った二人は、柏木をそっとしておくことにした。柏木から少し離れた所で、佐藤が「あ、」と何かに気づいた声を出した。
「発表終わった後の会長、泣きながら副会長に抱きついてなかった?」
「あーそういえば……なんだっけ、かおるんに嫌われたーとか言ってたような……」
その瞬間二人は顔を見合わせ、それだ、とお互いの目で話した。どうやら会長のあの姿は、身内にも目撃されていたようだ。
部屋を見渡すも、会長の姿は無い。副会長も居なかった。どうりでいつもより生徒会が静かな訳だ。これは何かあったな、と二人は気づき、さっき会長の話を柏木に振ってしまった事を後悔した。
その時、生徒会室の扉がノックされる音がした。会長など役員ならそんな事せずに入ってくるので、つまりこの来客は部外者だということだ。三年生の誰かが「はーい」と出て行く。
「柏木ー、お前に用だって」
そう言うと、三年生はさっきまで加わっていた輪に戻っていった。
呼び掛けられた柏木は顔を上げると、相手の顔を見た瞬間少し目を見開いてから、お茶の入った紙コップを置いて生徒会室から出て行った。
それから少しして、部屋の扉が勢い良く開けられた。こんな事をするのは、あの人しかいない。
「ねぇ、かおるん居る!!?」
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます!ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´_`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…!! (2017年9月10日 22時) (レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL?は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください!待ってます! (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか? (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/chiy1/
作成日時:2016年11月5日 12時