どこにいるの ページ49
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chishiya side
「残り6人になって、1人仲間を失ってしまった」
食料庫の影から身を出せば、驚いた顔をするコトコと目が合った。
「参ったことに、もう1人の仲間とははぐれちゃったしね。」
どこか恐ろしげな顔をしてその場を去ろうとする女。
他のプレイヤーとは隔離された状況にあるからか、オドオドして落ち着きがない。
……それとも他の、やましい事でもあるのか。
「さっきマツシタって男にマークを教えて貰ったんだけど…。どうも信用されてないみたいでウソを教えられたらしい。」
ピタリとコトコが止まる。
「ねえ。君はとても素直そうだし嘘をつくような人には見えない。どうか俺のマークを教えて貰えないかな?」
彼女の瞳がこちらを向く。
Aが居ない事に気づきざっと探してみたが、どこにもいない。
怒りを含んだ瞳で駆け出した先程のAを、腕を掴んででも止めるべきだったなと後悔しながら尚も続けた。
「あ、君のももちろん。嘘偽りのないマークを教えてあげるから。」
コトコが逡巡する。
「あんた、ヤバって男に随分入れ込んでるけど。アレ典型的な詐欺師のやり口だよ。君のマークは、ハート。…俺のはクラブだよね?」
俺の首輪を覗き込んだコトコが小さく息を詰め、走り去っていく。
差し出したクッキーにも向けずに、まるで怯えるように。
「は〜…。どこ行っちゃったんだか」
ペアがいないとこんなにやりづらいのか。
正直、自分のマークはどうとでもなる。こうやってカマをかけ続けていき、おそらくダイヤかスペードの2択に絞られた。
けれど彼女はそうもいかないだろう。
マツシタやコトコにそれとなく居場所を探ってみたが2人共口を割らない。
となるとバンダかヤバか…?
いや、あの起こり具合からしてジャックの元へ自己談判に言ったんだろう。
危なっかしいなあ、とため息をつき、それでも余談を許されない状況にため息をついた。
「どこにいるのさ、本当。」
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時