ファンだった ページ36
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「…おかえり」
「ただ、いま。」
中央に集まる。
没落した顔写真を見ながら、随分減ったなと考えた。
21名いたのに、生きている人数の方が死んだ数より少ない。
ここまでしてもジャックを減らせないのか。
「何話してたの？彼女と」
チシヤが顎をしゃくる先はウルミだ。
彼女は半泣きで駆け寄ってくる仲間に「大丈夫よ、次で殺しましょう？」と説得力のないことを囁いている。
その様子を、目を細めながら注視して私はため息をついた。
「彼女が私のファンだったって話。」
「…ふぅん、それはまた意外な。こんな所にも居たんだね。」
クイナといいタッタくんといい、結構有名だったんだ。
なんの感慨も無しに言うチシヤは、きっと出会った時の素振りからして私のことを知らなかったんだろう。
それが心地いいと感じてしまうのは、チシヤだからかな。
「それだけには見えないけど？」
スリ、と私の頬を指の腹でさする。
誰も見ていない秘密の行為にドクリと胸が高鳴って、赤くなった顔を冷やすように下を向いた。
そんな私を笑うかのようにクスリと喉の奥で声がした。
「昔の私が好きなんだって。」
「昔の？」
ポツリと呟く。
仲間を引き連れて地下室へ向かおうとする、純新無垢で天真爛漫な彼女を見つめながら。
「……昔の、音に囚われてた私。…救い出してくれるらしいけど…。」
彼女の瞳がおもむろにこちらを向く。
仲間を引連れて地下室へ移動するらしい。細められた瞳は真っ暗で、一体彼女が私の何を救ってくれるのか。
…見物だねぇ。
呆れたように呟くチシヤに完全同意した。
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作者名：みりん | 作成日時：2023年3月13日 23時
