The Crow's Dream 4 (ページ34)

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ミューズページ34

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「第8ターンスタート」

また始まった。
一体いつまで続くのだろう、このゲームは。
沢山人が死んだが、その中にジャックはいなかった。

「ジャックは誰なのかしらね？」

いちごミルクの飴を舐めながら問いかけてくるのはウルミだ。
自分が死ぬかもしれない恐怖なんて一切感じていないような顔で笑う彼女を一瞥し、「さぁ。」と返した。

「貴方なら分かるんじゃない？」

「……何を根拠に。」

チュパ、と飴が唇から離れる。
それをぼーっと見ていると、彼女が眼前まで近寄ってきて甘ったるい吐息と言葉を吐いた。

「貴方が“あの”天才ピアニスト、鳥谷Aだからよ。」

ピクリ。
反応しちゃダメ。分かってるのに、つい彼女を睨みつける。
そんなことこの世界では関係ない。元の職業や栄光は死の前では無意味だから。
彼女だってここまで生きのびてきたなら本能で理解しているはずだ。何が言いたいのか分からなくて目を細めると、楽しそうに笑う底なし沼のような黒い瞳とかち合った。

「だってぇ…。最後の公演、私も行ったわ。何の感情も湧かなかった日常にスパイスを与えてくれた。」

「スパイス？」

「貴方が苦しそうに、憎むようにピアノを弾く姿を見て思ったの。あぁ、人間の本質って感謝とか優しさとか、そんな生ぬるいものじゃない。…憎悪よ。」

最後の公演。
確か、クイナも来てくれたと言っていたな。
懐かしい名前を思い出す。
自分的には最後のつもりは無かったが、あれ以来糸が切れてしまったかのようになんの意欲も湧かなくなり表舞台から姿を消してしまったから、図らずともラスト公演となってしまった。

「…憎悪、ね。」

「まるであなたの音で人を殺せそうな…。私は感動したの。だからね、貴方は私のミューズなの」

ミューズ。
音楽の、女神。
彼女の胸の内をほんの少しだけ覗いた気がした。