ゼロ ページ29
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「回答の時間になりました。それでは お好きな独房に1人ずつお入りください。」
チシヤの隣、第1ターンと同じ場所のドアを開く。
イッペーくんとチシヤが「ハート」だと言ってくれた。
最早それを疑う余地は無い。
ふと、嘘のマークを教えられた男が脳裏に蘇る。
…誰も、何も教えなかった。
最後まで。
「それでは お答えください」
「……ハート」
時間が減っていく。
言った瞬間に答えが分かる仕組みでは無いのが、逆に焦らされているようで何だか落ち着かない。
3.2.1.
「……ゼロ」
思わず口に出せば、遠くの独房で何かが爆ぜた音がした。
一瞬間を置いて解錠音が響く。
ギイ、と扉を開いて外へ出れば、半信半疑のプレイヤーが中央監視所に集まっていた。
チシヤが独房から出て、肩を竦める。
青白い顔をしたイッペーくんと3人で皆の元へ集まれば、名前と顔写真が書かれたモニターがひとつ暗くなていた。
……キリウ ゲンキ。
あの暴力的な男だ。
爆ぜた音は、きっと……。
そこまで考えて、ふぅとため息を零したチシヤに現実に引き戻される。
残念だけど仕方ないね。
チシヤはそう言っているみたいで、彼の薄情さが羨ましかった。
「おい、どうすんだよ」
「あいつ死んだ」
「こいつだろ?」
各々のヒソヒソ声に思わず冷たい言葉を胸中で浴びせる。
……死ぬのが分かっててみんな答えを教えなかったのに、何を今更。
自分は悪くないみたいな顔をしてひたすら驚いた顔を作る人達がおぞましかった。
「ねぇ。」
ふと、ふわふわに編み込まれたお団子ツインテールを揺らしながらウルミが自分の仲間に話しかける。
「あの彼ジャックじゃない?嘘をついてあの大男を殺した。」
うっとりと、まるでこのゲームを心底楽しんでいるような表情。
「自分」が無いプレイヤーは女王様である彼女の言葉に耳を傾ける。
「このターンで殺してしまいましょうよ」
楽しそう、本当に。
腕を組みながら、震えるセトくんを顎でしゃくったこの女の方が、私にはよっぽど「ハートのジャック」に見えた。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時