離さないよ ページ36
・
チュンチュン。
夕方から貪るようにお互いを求め合っていた。
先に起きた私は彼の寝顔を見つめてそっと息を吐く。
張り詰めたそれには覚悟が含まれていた。
…ありがとう。
独房で、何度も私を助けてくれた。
もう、ビーチでのことは怒ってないよ。本当だよ。
「…チシヤ、ありがとう。本当に」
下着を身につけ彼のプラチナブロンドを撫でる。
綺麗な顔だな、と少し笑えば、止まったはずの涙が1滴零れた。
「…本当にありがとう。この先の短い間の生きていける糧をくれて。幸せだった。」
呟く。
衣類を身に纏う為にベッドから立ち上がろうとすると手を取られる。バランスを崩して倒れた私にそのまま覆い被さる彼。
「そういう事は起きてから言ってよ」
…あ、怒ってる。
「なんで…」
「なんで睡眠薬を仕込んだのに起きてるか、って？」
全部バレてる。
流石に薬までバレるとは思ってなくて小さく息を飲んだら、「独房でも寝てないのに飲むべきなのは君でしょ」と笑った。
…確かに私は、昨日手渡したペットボトルにくすねた睡眠薬を入れたのに。
「医者に睡眠薬入りのを渡してよくバレないと思ったね」
…医者だからじゃなくてチシヤだからだと思うけど。
黙っていれば、「…離さないよ」とキツく手首を握られる。
「…チシヤさん、」
「何で？君が全く分からない。あと少しだ、ゲームが終わるまで。一緒にいればいいでしょ、守れるから」
守れる。
当たり前のように出てきた言葉に胸が高鳴り、同時に「それじゃダメだ」と思った。
「…離してください」
「無理だよ」
「チシヤさん…、」
「まだ聞いてないしね。君にこんな錠剤を渡してたのは誰なのか」
ころりと指の腹で転がすのは私が飲んでいた錠剤。
…今思えば馬鹿だった、二ラギなんかが仲間だと信じて疑わずにそれをなんの抵抗もなく口に含んだのは。
「これは多量摂取するとこの薬に中毒症状を起こす危険がある。…さらには、健忘症もね。恐らく君が記憶を失ったのはショックが原因だろうけど、戻らない理由はコレだね」
…なるほど。
思い出して欲しく無かったのか、二ラギは。
私に「ひとりだ」と信じ込ませた彼こそが本当に孤独な人に見えて悲しくなる。
…あんなやつでも、記憶を失った私と一緒に居てくれたのだ。
母親にも情が湧いたように、彼にも湧く。
「…でも、眠たくなってきたでしょう？チシヤさん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 269人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みりん(プロフ) - がんもえさん» クイナとアンのペア、すごく好きです(；；) ただ、スペードのキングのゲーム後にクイナに冷たい態度を取っているので…仲直り出来るのか( ›_‹ ) (2023年2月7日 0時) (
レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - おむらいすさん» お母さんと交代してもらいました！暫くチシヤのターンですのでお付き合い下さい( ◜ᴗ¯)🤝(¯ᴗ◝ ) (2023年2月7日 0時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - らむねさん» 実は、参加しないのです！やっぱりこのゲームは残酷なので、2人とも生き残るのは違うかなと¯֊¯⋆꙳ (2023年2月7日 0時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
がんもえ(プロフ) - 別のゲーム会場で誰かと会うのかな！クイナとかアンに会って欲しい……… (2023年2月6日 23時) (レス) @page41 id: 828bc06f55 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - dさん» そうなんですよ…( -᷅ ̫̈-᷄ )𐑲𐑲𐑲 チシヤと鉢合わせてしまうのか、ご期待ください✨️ (2023年2月6日 23時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みりん | 作成日時：2023年2月1日 23時
