寝れないフライデー ページ9
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『凪は何飲むー?』
「とりあえず生」
『それって本当にビールの美味しさ分かって言ってる?』
「Aみたいなお子ちゃま舌には分かんないか」
『ビールは舌じゃなくて喉で味わうんですぅ』
「はいはい、じゃあAもビール?」
『いや、私はカシオレ』
「ジュースじゃん」
『お酒だよ!』
そう言ってぷりぷりと怒る彼女に、思わず表情筋が緩んだ。
『食べ物は適当に注文していい?』
「んー、よろしくー」
『任せろ!』
意気揚々とタッチパネルをいじる彼女は、俺の食の好みをきちんと把握してくれていて。
何も言わなくてもまとめて注文してくれるから、やっぱり居心地がいい。
それから運ばれて来た料理を口にしながらお酒を飲んで。
いつも通り他愛もない話をしながら楽しそうに笑う彼女に相槌を打っていた。
『でもいいなぁ凪、好きな子いるなんて』
「…どーゆー意味?」
『なんか楽しそうじゃん』
「そう?」
『ふふ、私もちゃんと恋とかしてみたいなぁ』
そう言ってふにゃりと笑う彼女との付き合いは、今年で3年目になる。
いつでも何でも素直に話してくれる彼女だけど、恋愛に関する話だけはほとんど聞いたことがなくて。
だからと言って彼女はかなりモテるタイプだから、今まで一人も彼氏が居たことがないとも思えない。
「…そういえばAのそーゆー話、あんまり聞いたことないかも」
『んー、私そういう感情に疎いのかなぁ?ちゃんとした好きな人、出来たことないんだよねぇ』
「まぁ鈍感だもんね」
『告白してくれた人と付き合ってみたことも何回かあったんだよ?そのうち好きになれるかなぁと思って』
今までまともに聞いたことのなかった彼女の恋愛話を今さら聞いて、胸が騒つく。
もしかして俺が知らなかっただけで、実は最近まで彼氏が居たりしたのだろうか、と思わず焦る。
「…それっていつの話?」
『中高生の頃の話だよ!でも結局どの人も好きになれなくて、それが原因で別れちゃって』
「…ふーん」
『そんなの繰り返してたらだんだん相手に申し訳なくなっちゃって。大学に入ってからは全部お断りしてるの』
「…そうだったんだ」
あっけらかんと話す彼女に何でもないような返事をしながら、内心は胸を撫で下ろす。
安堵からか急に喉が渇いて、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干した。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時