. ページ41
.
いつも以上に元気になった彼女は、いつも以上に食べて飲んで酔っ払っていた。
『なぁぎ、おんぶー!』
「はぁ?」
『おーんーぶ!してー!!』
「うるさ」
帰り道、そう言ってこちらに向かって両手を広げる彼女に心臓を鷲掴みにされる。
仕方なく彼女に背中を向けて屈めば、勢いよく抱きついて来た。
『うわぁ、たっかーい!!』
「耳元で叫ぶのやめて」
『ぁ、ごめんなさーい…たっかーい…』
「てか俺、おぶられる専門なんだけどー」
『あはっ、嘘だぁ〜』
「本当だよ」
『そんなワケないじゃん〜、凪をおんぶ出来るとかどんなビッグゴリラよ』
「んー、俺より大きくはないけど、御曹司ゴリラ」
『んはは、何それぇ』
なんてケラケラと笑っている彼女は楽しそうで。
『ねぇ凪〜?』
「んー?」
『もうすぐ夏休み終わっちゃうねぇ』
「そうだねー」
『楽しかったなぁ』
「そりゃよかった」
『凪のおかげだよ、ありがとぉ』
俺の首に回していた彼女の腕にぎゅう、と力が込もって。
この時間がもっと続けばいいのになぁと思ってしまう。
「俺も、Aのおかげで楽しかったよ」
『いっぱいお出かけに付き合わされたけど?』
「うん、Aとだから楽しかった」
『看病もさせられたけど?』
「うん、可愛いA見れたから役得だった」
『…んふふ、そっかぁ』
「Aはすごいね。俺の性格とかいろんなもの、どんどん変えてっちゃう」
『そうなの?』
「そうなの」
めんどくさがりで、出不精で、誰かの面倒を見るなんて考えられなかった俺なのに。
それでも変化する自分が全然嫌じゃないから不思議だ。
「夏休み最後は何したい?」
『え〜、最後?どうしよう迷う…!』
「迷うほどやりたいことあんのすごいね」
『だって凪となら、何してても楽しいんだもん』
そんな風に言う彼女の顔はおんぶしているせいで見えないけれど、きっといつもの笑顔なんだろうなぁと想像する。
本当は今日、告白の返事を聞けたりしないかなぁなんて少し期待していた。
看病したときも今日も、脈アリっぽい言動があったから。
けれど思ったよりも酔っ払っている彼女にそんな話をするのもどうかと思って聞けなくて。
「じゃあ何したいか考えといて」
『ん、分かった!』
「…その時に告白の返事、聞かせてくれる?」
『ん、分かった!』
「ん、ありがと」
そんな約束をして、その日は彼女を家まで送り届けた。
.

214人がお気に入り

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時