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とりあえず買い物袋の中から冷却シートを取り出して、彼女の丸いおでこにそれを一枚貼る。
そうすると寝苦しそうに眉を顰めていた彼女の力が抜けて行った。
「…うし」
それに少し安心して、買って来た彼女の好きそうな食べ物やスポーツドリンクを冷蔵庫に片付ける。
そして急いで彼女の元に戻れば、
『…んふふ』
「…何の夢見てんの」
『……なぎー』
「…もう、本当だめだって、それ」
なんて再び可愛らしく寝言で名前を呼ばれて。
たまらなく愛おしくなって、我慢出来ずに思わず冷却シートの上からキスをした。
『ん…あれ、なぎ』
「んぁ、起きた?」
『うん、おきた』
「おはよー」
『おはよぉ…』
目が覚めた彼女がこちらを見て、ふにゃりと笑う。
熱のせいで潤んだ瞳と赤らんだ顔が色っぽくて、つい湧いてしまった煩悩を慌ててかき消す。
『ふふ、なぎがいる〜…』
「ん、いるよ。大丈夫?」
『んー、さっきよりマシ、かなぁ…』
「これ飲んで水分取って」
『起きれない…』
「はいはい」
こちらに向かって両手を広げる彼女の背中に腕を回して、上体を起こさせる。
すると俺の首に回していた腕にギュッと力が込もった。
「何か食べれそう?ゼリー、プリン、アイス、お粥ならあるけど」
『ゼリー…』
「取って来てもいい?」
『…ん』
「…一回腕、離せる?」
『…やだ』
「ゼリー持ってすぐ戻ってくるから、これ飲んで待ってて。ね?」
『…はぁい』
小さい子に言い聞かせるようにそう伝えれば、寂しそうに腕を解いた彼女。
何だこの可愛い生き物、なんて思いながら急いでゼリーとスプーンを取って彼女の元に戻る。
「こっちとこっち、どっちがいい?」
『…まよう』
「じゃあ今はこっちね。あとでもう一個の方食べな」
『なぎ…、いっしょーのおねがい』
「ん、なぁに」
『たべさせて…』
「はいはい」
そう言って彼女の口元にゼリーを運べば、ふにゃりと嬉しそうに笑う彼女。
『ん…おいし』
「そりゃよかった」
『ありがと、なぎ』
「どういたしまして」
『なぎ、もー食べれない』
「ありゃりゃ、相当だね」
『ごめんね』
「んーん、無理しなくていいよ。ちょっとだけでも食べれて偉いね」
自分がこんなに誰かを甘やかして看病する日が来るなんて、自分ですら想像つかなかった。
けれどこれも悪くないな、なんて思いながら彼女の頭を撫でた。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時