やけに気だるい夜も ページ36
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あれからちょくちょくお互いの家を行き来して泊まったり、バイトとかの都合で泊まれない日にも会ったりして。
ほぼ毎日のように一緒に過ごしていたけれど、それでもやっぱり飽きるどころかもっと彼女を好きになって。
この気持ちに上限はないのかなぁ、なんて考えても無駄なことを考えたりしていた。
『なぎ、ごめ…今日行けそうにない…』
「どうしたの?」
『ちょっと、体調が…』
この日は彼女の買い物に付き合う約束をしていた。
けれど当日の朝、泣きそうな声をした彼女からそんな電話がかかって来た。
『なぎとお買い物、行きたかったぁ…』
「また元気になったら行こ」
『うん、本当ごめんねぇ…また連絡、する』
「いやいや、何でそうなんの」
『え…?何か違った?ごめん、今あんま、頭回ってない』
「それはいつものことでしょ」
『ん、ごめん…』
「ありゃりゃ、重症だね」
舌足らずな喋り方をする彼女は反発する気力も残っていないらしくて。
元々寂しがり屋な彼女のことだから、熱がある今はきっともっと心細くなっているんだろうな、なんて思って。
「キツイかもだけど、鍵だけポストにでも隠しとける?」
『ポストに、鍵…?』
「今から行くから、寝て待ってて」
『なぎ、来てくれるの…?』
「うん、何か食べられそうなもの買ったら行くから」
『うぅ、ありがと〜…なぎ〜…』
「だから泣かないの。ちょっと待っててね」
『うん〜、待ってるぅ…』
泣きそうな声を通り越して、しくしくと泣き始めてしまった彼女。
そんなところすら可愛く思えるのだから、やっぱりこの気持ちに上限はないのだろうと思う。
早く行ってあげなきゃという一心で急いで買い物を済ませて彼女の家へと向かった。
「おじゃましまーす…」
隠してあった鍵を使って彼女の家に入り、真っ直ぐにベッドのところへと向かう。
すると真っ赤な顔をした彼女が眠っていた。
おでこに手を当てればかなり熱くて、呼吸も浅くなっていて、見るからにしんどそうで。
『ん…なぎ…』
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
『……』
「…え、今の寝言?…やば」
そんな状態でもやっぱり今日も可愛くて。
たぶん一番やばいのは頬が緩み切っているであろう俺の顔だろうな、なんて思っていた。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時