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講義が終わってAとの待ち合わせ場所に向かえば、何故か彼女は暗い表情をしていた。
「…A?」
『あ、凪…』
「どうかした?」
そう尋ねれば気まずそうに目を逸らすから、俺が講義を受けている間に何かあったことを察する。
「またゲーム負けた?」
『あ、いや…そんなんじゃないよ』
「でも暗い顔してる。…俺には言えないこと?」
『ううん、違うの。あの…凪、合コン行ったの?』
「え?あー、うん。行ったけど…」
『玲王くんも一緒だったって、さっき聞いて…』
予想していなかった内容に思わず驚く。
けれど玲王の名前が出た瞬間にその表情の意味を理解した。
玲王が合コンに行ったことを知って、あわよくば玲王のことを諦めてくれればなんて思っていたけれど。
俺のズルい考えが結果的に彼女を傷付けてしまって、浅はか過ぎた自分に腹が立った。
「…それで泣きそうな顔してんの?」
『別に、そんなつもりはないんだけど…』
「いつの間に泣くほど玲王のこと好きになってたの?全然気付かなかった」
『違…っ』
「嫌なんだけど、Aが泣いてるとこ見るの」
『ごめ…なさ、』
彼女を責めたいワケじゃないのに冷たい言い方しか出来なくて、そんな自分が嫌になる。
このままじゃまた彼女を傷付けてしまう、けれどそれだけはどうにか避けたくて。
「…もう、俺でいいじゃん」
『え?』
「俺のこと好きになりなよ。そしたら絶対にAのこと泣かせないのに」
遂に言ってしまった。
怖くて顔は見れないから、彼女の頭をギュッと抱き寄せる。
『…なぎ、』
「…なぁに」
『凪は私に優し過ぎるよ』
「…は?」
彼女の声色が柔らかくなって、嫌な予感がする。
腕の力が緩んだのと同時に彼女が顔を上げて、表情を見れば寂しそうに笑っていて。
『ありがと。玲王くんのことは、そこまで落ち込んでないよ』
「…そうなの?」
『凪が居てくれてよかった。ありがとう、凪』
それならどうしてそんな顔をしているのか、その理由が俺には分からない。
けれどきっとこれは良くない流れだということだけは、何となく分かった。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時