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彼女から繰り出される"一生のお願い"にはいろんな種類があった。
『凪っち〜、助けてちょ』
「やだよ、めんどくさい」
『まぁまぁ、話だけでも。このレポートなんだけどさ』
「いま断ったよね」
『だめ、聞いて』
「だめって何なの?」
少し強引に、且つ断る隙もないくらいナチュラルに。
気付けばレポートの作成を手伝わされていることもあれば。
『ねぇ凪、そろそろ私のこと名前で呼んでよ』
「…急にどうした」
『本当は苗字で呼ばれるの苦手なんだよね、ちょっと距離感じて寂しいから。ね、お願い』
「それを言ったらAも俺のこと苗字で呼ぶじゃん」
『凪って名前っぽいし、可愛いからいいじゃん』
「……」
『それに誠士郎ってちょっと長いし』
「そっちが本音だろ」
『いいじゃんいいじゃん!』
なんて可愛らしく強請るようなワガママを言ってみたり。
かと思えばある日を境に少しずつ元気がなくなっていって。
その理由を何度も尋ねてみても、なかなか言おうとしない日々が続いて。
『凪ぃ、もう限界だぁ…』
「やっと話す気になった?」
『うん…。自力で解決しようと頑張ってみたんだけど、無理だった…』
「今回は珍しく粘ってたね」
『うん、けどごめん…。一生のお願い、助けて…』
「今度は何」
『なんかね、最近毎日のようにポストにこんな変な手紙が入れられてて…』
ポロポロと涙を溢しながら彼女が差し出した紙切れを見れば、それは一目で分かるストーカーからの手紙で。
「は?」
『ついにはこんなモノまで…』
彼女が遠慮がちに見せて来たスマホの画面を見れば、男の俺でも気持ち悪いと思ってしまうモノが写されていて。
「…お前さ、何でもっと早く言わないの?」
『だってぇ〜』
「こういうことはもっと早く言えよ」
『迷惑かけちゃうと思ってぇ〜』
「バカでしょ」
本格的に泣き始めた彼女をどう慰めたらいいか分からずとりあえず抱き寄せれば、その小ささと柔さに驚いて。
その後は彼女を苦しめた犯人を見つけ出して、彼女には内緒でボコボコにした。
俺は自他共に認める、極度のめんどくさがりだ。
『凪、ありがと!凪が居てくれて本当によかった』
「…そ」
それでもいつも最後には必ず笑ってお礼を言う彼女を見ていれば、だんだん放っておけなくなって。
男という生き物は自分を頼ってくる人間を好きになる、なんてどこかで聞いたことがあるけれど。
その言葉の通り、気付けば俺は彼女を好きになっていた。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時