息苦しくなってばっか ページ13
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白宝高校のOB戦当日。
待ち合わせ場所に着けば、ニコニコと嬉しそうに笑う彼女がすでに立っていた。
『おはよう凪!今日は絶好のサッカー日和だね!!』
「おはよ、なんか今日テンション高くない?」
『だってサッカーするんだよ?あの凪が!!』
「言っとくけど俺キーパーだし全然動かないよ」
『え、そうなの!?』
「なーに嘘吐いてんだよ、お前はFWだろ」
『あ、玲王くんもおはよ〜』
「おはよ、Aちゃん」
そう言ってただ挨拶を交わす二人にさえモヤモヤしてしまう。
「…ほら行くよ、A」
『凪ってば、やる気満々じゃーん』
「そうでもないよ」
「…お前、意外と分かりやすいのな」
「でしょ?本人には何一つ伝わらないけど」
「いつから?」
「1年の頃から」
「え、結構長いじゃん」
「俺、一途だから。Aー、そこ右」
『オッケー任せて!』
目的地も知らないクセに張り切って先頭を歩く彼女。
その背中を眺めて玲王とそんな話をしながら会場までの道を歩いた。
『待って、ここが凪たちの母校…?』
「そ」
『人工芝じゃん…凪ってボンボンだったの…?』
「ボンボンは玲王の方だよ」
『そうなの…?』
会場に着けば案の定、他の男たちからの視線が彼女に一気に集まった。
しかし当の本人はそんなことに気付くこともなく。
校舎やグラウンドの規模の大きさに圧倒され、ついには俺の後ろに隠れてしまった。
『これが本当に高校なの?デカすぎやしない?』
「何にビビってんの。そんなもんでしょ」
『田舎にはこんな施設なかった…都会怖い…』
「何言ってんの」
『私、完全に場違いじゃん…』
「ははっ、Aちゃんおもしれー」
『全然笑えないよ玲王くん…』
ギュッと掴まれた服の裾に優越感を感じて、
「怖いなら手、繋いどく?」
『繋いどく〜…』
「ふはっ、凪が甘ぇ〜」
「うるさいよ、玲王」
そう言いながら小さな手で俺の手をギュッと握って来るから、また愛おしくなった。
『試合終わったらすぐ帰って来てね』
「はいはい」
『待ってるからね』
「はいよー」
『気をつけてね』
彼女を観客席まで送り届ければそんな風に見送られるから、後ろ髪を引かれる思いってこれかぁと思う。
「可愛いな、Aちゃん」
「…やめてよ玲王」
「合コンでも一番人気だったし」
「だろうね」
「うかうかしてっと誰かに取られちまうぞ?」
「…そんなの分かってるよ」
そんな玲王の言葉が、試合中もずっと引っかかっていた。
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chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました!! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます!!凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです! (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます!!更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです!これからも応援してます! (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年7月16日 10時