. ページ12
.
その話はそこで終わって、いつものように二人で並んでスマホを手にゲームをしていた。
いつもなら特に頭を働かせることのないその時間。
それを今日は、今後どうすれば彼女が俺を意識してくれるのか考えるためにフル回転させていれば、
「おーい、凪！」
「最悪だ…」
『あれ、玲王くん！』
「あれ、Aちゃんじゃん！昨日はありがとな」
『こちらこそ、助けてくれて本当にありがと！』
「いやい「玲王、何か用？」あぁ、悪ぃ凪」
タイミング悪く現れた玲王に、申し訳ないけど当たりが強くなってしまった。
「今度のOB戦、凪も行くだろ？」
「めんどくさいし行かない」
『え、凪なんか部活やってたの？』
「サッカー。コイツめちゃくちゃ上手いんだぜ」
『そうなの！？初耳なんだけど！』
「…別に、話す機会なかったし」
『えー、凪が動くところ見てみたい！』
「…俺のこと何だと思ってんの」
目をキラキラと輝かせる彼女に嫌な予感がする。
「いいじゃん、Aちゃんも観に来れば」
『え、でも部外者が行っても大丈夫なの？』
「大丈夫だろ！なぁ、凪」
「…俺まだ行くなんて一言も言ってないんだけど」
『えー、いいじゃん、行こうよ！凪のサッカーしてるところ観たい！』
「めんどくさい」
『お願い！一生の！』
「本日のお願いの間違いでしょ」
『ねぇ〜なぁぎ〜』
そう言いながらいつものように俺の腕を小さな両手で掴んでぶんぶんと振り回す。
彼女は一生のお願いを一日に一度しか使わない。
きっとさっきのお願いは聞かなかったから、再度使って来たのだろう。
そんなちゃっかりした彼女も可愛いと思いつつ、溜め息を吐いた。
『どうしてもだめ？』
「…はぁ」
『凪が嫌なら、諦めるしかないけど…』
見たかったなぁ、なんて唇を少し尖らせて寂しそうな顔をしてこちらを見つめる彼女。
これを常に無意識、無自覚でやっているのだから本当にタチが悪い。
「分かったよ、行けばいいんでしょ」
『え、本当！？やったぁ、走る凪見れるー！』
「…スゲーなAちゃん、凪を説得するなんて」
『凪は優しいから。ねー、凪？』
なんて言いながら俺の頬に両手を伸ばして、潰すみたいにして撫で回す。
「…そうそう、Aだけにはちょー優しいから、俺」
「…なるほどな」
そして玲王はすべてを察したようで、哀れむような目をこちらに向けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chiito(プロフ) - ねう。さん» もしいい感じの話が思い浮かんで書けたら、またお付き合いい頂けると嬉しいです♡本当にありがとうございました！！ (2023年7月30日 16時) (
レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - ねう。さん» ねう。さん、勿体ないくらいのとっても嬉しいコメントありがとうございます！！凪にお前って呼ばれたい人生でした。。笑 そうなんです、玲王のお話も書けたらなぁと思いながら書いてたんです！ (2023年7月30日 16時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 一気読みさせていただきました。とても面白かったです…終始涙が止まらず、胸が苦しくて笑 冒頭から終わり方まですごく綺麗で、凄く素敵な作品だなと思いました。ごく稀にお前って呼ぶスタイルすごく刺さりました。アナザーストーリー的なで玲王の恋路も気になります笑 (2023年7月29日 10時) (レス) @page46 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - まぴさん» まぴさん、嬉しいコメントありがとうございます！！更新がんばりますので、これからもよろしくお願いします〜(^^) (2023年7月17日 12時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
まぴ - いつも楽しく小説見させてもらってます✨凪くん大好きなので嬉しいです！これからも応援してます！ (2023年7月16日 23時) (レス) id: 860b8d9e21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：chiito | 作成日時：2023年7月16日 10時
