易しい知恵熱【Q.K】

not so bad / fkrP ページ7

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　その頃、僕はまだ"けんくん"だった。
幼馴染のAちゃんはいつだって僕の後ろを雛鳥のようについて回っていた。

　幼い僕はその事に少し得意げになって、Aちゃんにあれこれ教えていたように思う。
勉強然り、常識然り。

　それで調子に乗って夢をぶち壊したんだ。
Aちゃんの大好きだった王子様の絵本がフィクションであると現実を突きつけて。

　いつかお姫様になって王子様と結婚する、なんて言い張るAちゃんが面白くなかったのも事実だ。
だってAちゃんは、僕のトクベツだったから。

　Aちゃんの寝顔を眺めながら、そんな昔のことを思い出す。
あの後泣いて怒るAちゃんにどうにかして許しを請うたんだっけ。

　何を言って謝ったのかは覚えていない。
寝息を立てるAちゃんは幼くて、まるであの頃のようだった。

　時は止まらない。常に進み続けている。
こうして再会した今、Aちゃんがまた僕を追いかけてくれるかもだなんて。そんな傲慢なifを抱いたまま彼女の寝顔を眺め続けたら、いつか僕はAちゃんを囲い込んでしまいそうだった。

　そんな考えを振り払うように彼女の肩を揺する。


「Aちゃん、起きて」

「んぅ、福良くん……？ はれ、私寝てた……今何時？」

「まだ18時だけど、オフィスで眠り込んだら危ないでしょ。お家帰って寝たほうがいいよ。僕も帰るし一緒に帰ろう」

「うん……起こしてくれてありがとう。ちょうどね、福良くんの夢みてたよ」

「えっ、どんな？」

「記事書けー！ って鬼ふくらPが追いかけてくるの。MacBook片手に」

「なにそれ」

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