chewing gum

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side_Hokuto




別にひどいことを言いたかったわけじゃない。


だから、京本くんが半泣き顔で部屋を

飛び出した時、またやってしまったと思った。


どんなことを言ったら人は悲しむのか、

俺にはわからない。


わからないから、たくさん人を傷つけてしまう。


どうしようか項垂れていると、入れ違いで

森本くんが戻ってきた。


「…きょも、どうしたの？

めっちゃ走ってどっか行ったけど…」


俺は森本くんに今あったことを全て話し、

どうすればいいか助けを求めた。


軽蔑されても、怒られても仕方がないと

思っていたが、森本くんは話し終わっても

そんな様子はなく、むしろ少し笑っていた。


「そっかー、そっかそっか」


「…俺、本当のことなんでも言っちゃって…」


「…じゃあ松村くんは、きょものこと嫌い？」


「……京本くんのこと…と言うより、彼の…人生」


「なるほど…まぁ、それはきょもも一緒だよ」


「…え？」


「きょもも自分があの家に生まれたこと、すごく

嫌ってるんだよ。だから、人一倍努力してる」


…わかってる。


京本くんが努力してるってことは、彼の成績を

見れば一目瞭然だ。


生まれが恵まれているからって理由で、

あそこまでの成績は取れないだろう。


「…けど、好きにはなれない」


「……それはそれでいいんじゃない？

無理して友だちとかにならなくても…あ、

でも俺は北斗くんと友だちになりたいけどね」


森本くんはニカッと笑い俺の肩をポンっと叩いた。


「…そろそろ寝ようか。きょも呼んでくるね」


「俺…たぶん謝れない」


「…うん。それも、気が向いた時でいいよ」


森本くんの優しすぎる言葉に甘え、目頭を赤くして

戻ってきた京本くんを見ても、俺はなんの言葉も

かけなかった。


言葉だけの謝罪は、無意味だと思った。


本当に彼に謝りたいと思う日が来るまで、俺は

きっと、もう彼と言葉を交わすことはないだろう。


そんな感じのまま、三泊四日の合宿も終わり、

あっという間に夏休みも終わり、

秋風が吹く9月が訪れた。


相変わらず、京本くんとはギクシャクしているが、

森本くんとはかなり親しい仲になれた。


「北斗、この前の課題なんだけど…」


「見せないよ」


「まだ何も言ってないじゃん！」


「言わなくてもわかるよ」


「…まぁ、そうなんだけど……」


俺に初めて、友だちができた。


けど、友だちの友だちと、自然に友だちになれる

ことはないらしい。




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