25.日陰 ページ25
「…ああ、怒ってるよ」
「ほう…お前が答えるなんて珍しいな」
ボクは彼女の毒にそうとうやられているようだ。意識すればするほど…それは根強くなる。
「っ!ぐ」
「…ここで、お前を殺すのもいいかもな」
腹を殴り膝をついた男の首にナイフを当てる。
朝起きて彼女がこいつの死体を見たらどんな反応をするんだろう。ボクの知らない彼女の表情をみられるかもしれないな。
そう思うと、言い様のない感覚が身体中を駆け巡った。
「…っくく、そうか。お前好きになったのかその女を」
こんな状況だというのに男は笑った。
「ま、当たり前と言ったら当たり前だよな」
ナイフを握る手に力を入れる。
「…殺す、ね。お前は俺を殺せるのか?」
「この状況で殺せないほうが難しい」
「…言い方を変えよう。俺を殺して、そのあとはどうする」
「そんなの……!」
_一緒に逃げないかい?ヒソカ_
「………」
「…どうした?俺を殺して"彼女"と逃げるんだろう?……ま、無理だろうけどな」
男がボクの動揺につけこむように言う。それを悟られないように咄嗟に口を開いた。
「無理なことじゃないだろ。お前の手下くらいボク一人でどうにでもできる」
「そうじゃない。…お前は日陰で生まれた、陰でしか生きたことがない。…比べて彼女は光だ、太陽だ」
「…何が言いたい」
「例え彼女と逃げてもお前は耐えられなくなる。…そして自分からまた日陰を選ぶ。また俺のようなところに戻ってくるんだ」
「!っ勝手なこと言っ!!」
「お前がここに居るのもその結果だろう?」
「!」
…………。
何も言い返す言葉が見つからなかった。正にそれが…ボクが彼女と逃げない理由そのものだった。
男がボクのナイフをどかし立ち上がる。
それから殴った腹をさすっていた。
「痛っ…痣になってなければいいけど…。いつもならここでお前を殺すか解雇するとこだが…タイミングが悪い、明日だしな。…ヒソカ、仕事はしっかりしろ。そうすれば解雇にはしないでやる」
「…………」
男が去っていく足音が聞こえる。扉の開閉音も。
ボクは暫く地を見ていた。
…ああ、そうだ。クズの心なんてクズにはお見通しな訳だ。
「…は、ははっ」
毒が覚めた気がした。
ボクは一体何に迷っていたんだろう。
彼女は予定通り明日出荷される。
明日が過ぎればまた、いつもの日常に戻れる。
ボクには選択肢など初めから無かった。
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キヨラ - これからもがんばってください。 (2018年10月23日 18時) (レス) id: 6e365f857a (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - 花菜さん» そう言って頂けると嬉しいです!続編まで行きました!引き続きお楽しみ下さい。 (2018年3月27日 18時) (レス) id: 14e35c6c6f (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - sataroさん» 励みのお言葉ありがとうございます!続編まで行ったのでお楽しみ頂ければ幸いです。 (2018年3月27日 18時) (レス) id: 14e35c6c6f (このIDを非表示/違反報告)
花菜(プロフ) - すごく面白くてとても続きが気になります!!更新がんばってください!(*´∀`*) (2018年3月21日 14時) (レス) id: b7876a4134 (このIDを非表示/違反報告)
sataro - 凄く読みやすく面白いので続きがまだかまだかと気になります笑更新応援しています! (2018年3月15日 16時) (レス) id: 4a264aed23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年1月7日 2時