肆拾 ページ40
『……離してください』
「どういう状況なのかは分かりませんが……コナンくんを見る限り、あまり良い状況では無いようですね」
『ええ、そうです、だから離してください』
「貴女が一人で何かしようとしているこの状況が、ですよ」
『!』
何を言っている、そう言おうとして口を閉じる。…振り返った先の少年の顔は、あまりにも悲痛で、なにより…私に懇願するような瞳を向けていた。
『…………』
影が見えるのは…こういう時に厄介だ。
「貴女の言い分では"こちらまで移動することは不可能に近い"のでしょう?」
『………』
「一度落ち着いて、考えることを推奨しますよ」
『…………』
腰に添えた手を下ろす。
「…A、さん」
『………すまない。君にそういう顔をさせる気はなかった。…それに冷静さが欠けていたのも事実だ。……だが、どちらにせよこのままというわけにはいかない』
深呼吸をし、自身を落ち着かせる。……確かに、この場で戦闘になったら民間を巻き込む可能性があった。この道には人が多い。路地でやりあっている最中に人が来ないとは限らない。そうなれば結局、さっきと同じだ。
だが、このまま鬼を放っておくのは本末転倒。
どうすればいい…。路地は私たちが居る方とは反対側だ。自然と光が壁を作っている。日が暮れない限り、急な大雲が来ない限り、こちらへは接触できない。同時に、火の元を歩く大勢の人々への接触も不可。路地へ曲がる民間にだけ注意を払えば、危険はない。
この距離なら、鬼の動向を監視できる。
「…とりあえず目暮警部に」
『駄目だ』
「!…でも!!」
『言っただろう彼らは弱いと。私はその言葉まで訂正した覚えはない。……まだ、彼らが藤の花を持っているのなら別だった。路地の出入り口に立ってもらえれば奴にとって牢へと変わる。だが、ついさっきの今では丸腰の民間でしかない。無駄死にするだけだ』
……それに、藤の花を持っていたとしても……出来るだけ関わっては欲しくない。
「っ……!」
私の言っていることは正論だ。経験値が違うのだから説得力がある。…だからこそやるせないのだろう。少年は歯を食い縛り、拳を握る。
「藤の花なら今お店にありますよ」
……え、?
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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時