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「またヒョンのこと考えてる」
『思い出しただけだよ』
「…それを考えてるって言うんだよ」
拗ねたように歩き始めたジェノだけれど、手は離さないしスピードも相変わらずわたしに合わせてくれている。ジェノの好きな人は不明のままだけれど、お姉ちゃんの気持ちとわたしの気持ちが入れ替わればいいのに。それなら少なくとも、同じ片思いでも今みたいにやるせない気持ちにならずに済む。世界一大好きなお姉ちゃんのままでいられるし、この醜い感情が出てくることもなくなる。魔法使いや魔女が存在するのであれば今すぐそれをお願いしたい。でもそれだとわたしがジェノを好きになるってことなのか…
『それは困るな』
「なに?」
『ジェノとはずっと友達でいたいって話』
ずっと、が続く訳ないからせめて高校生活ぐらいは今のようにふざけてたまには真面目にやって、何にも考えなくていいように5人で騒いで過ごしたい。わたしたちの仲で恋愛感情が生まれるようなことがあったら、それこそ何もかもがぐしゃぐしゃになって終わってしまう気がする。
「…友達なんて思ってるのそっちだけだよ」
『風強くて聞こえなかった、何?』
さっきまできつく繋がれていたのが嘘のように緩んだ手。人ひとり分空いた距離は変わらないのに少しばかりジェノが遠くにいるように感じた。わたしは同じ強さで握っているけれど、ジェノはもうそれを直す気はないらしく、わたしの顔を見て優しく微笑むだけだった。いつもの同じ笑顔のはずなのに何かが違う、その何かは分からないけれど、それに気付いたらきっと今の生活が180度変わってしまうようなそんな気がして不自然にならないよう目を逸らした。
来る途中に寄ったコンビニに再び足を運ぶと、店員さんがおじさんに代わっていた。飲み物を適当に選んでレジまで持って行くと、若いのカップルだねと誤解をされたため、何度目だよと心でうんざりしながら否定をする。その時ジェノはどんな表情をしているか気になって盗み見たら、ばっちり目が合ってしまった。
イマークがお姉ちゃんに向けて、お姉ちゃんがジェノに向けるような表情を、ジェノはどうしてわたしに向けているんだろう。これは触れない方がいいのかもしれない。好きな人ってもしかしてーー
思い違いならいいけど再び繋がれた手が正しいと訴えている気がする。それからはお互いが飲み物を飲む音と、名前の知らない鳥の声しか聞こえてこなかった。
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rri(プロフ) - すっごくどタイプすぎるお話です…!最高すぎます!!!これからも楽しみにしています!!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 476bb9a440 (このIDを非表示/違反報告)
+(プロフ) - いつも楽しませていただいてます。姉を想う主人公ちゃんが健気で、なんでこんなに良い子なのに気づかないんだ…!と毎回もどかしい感情を抱いてしまいます笑 主人公ちゃんもみんなも幸せになって欲しい泣 応援してます! (2021年2月23日 23時) (レス) id: a20d1c0829 (このIDを非表示/違反報告)
マナ(プロフ) - 文章、展開、設定、みんな好きで何度も読み返してます…これからも楽しみに読ませていただきます!! (2021年2月12日 9時) (レス) id: 597d1257a6 (このIDを非表示/違反報告)
侑那(プロフ) - わかりそうでわからないマクとジェノの感じが読んでてワクワクします!ナナやエクソ先生たちとの関係も最高です(*´˘`*) (2021年2月8日 15時) (レス) id: 5bbaa8a42e (このIDを非表示/違反報告)
xuu(プロフ) - 語彙力ないので伝わらないかもしれませんが、もうなんというかお話の雰囲気がほんとにどタイプ過ぎます泣応援してます!更新頑張ってください!! (2021年1月17日 19時) (レス) id: c7b9fc6037 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2021年1月14日 14時