α indi

ヒーロー＿ko ページ17

女々しいこうちゃん書きたい定期。



***



「寒、凍るわこれ……」



文句を垂れ流す朝。

日に日に強さを増す寒気が、私の肌の露出した部分……主に顔付近を襲う。

黒のネックウォーマーをくいっと上げて対抗、口内の温い空気が生地を暖める。

台風だの祭りだの、人々の心に灯火を与える画期的なイベントが過ぎ去った晩秋。

それでも万年活気を帯びているのが東京。

街角ではマフラーやらセーターやらコートといった冬物服が売り場に駆り出され、恋人達の一大イベントであるかの聖人の誕生日に向けてライトアップされ始める頃合い。

ちょっと先取りが過ぎる気はするけど、此処は流行と技術と繁栄の最先端の街、そこには目を瞑っておこうかなと。



「おはよぉー」


「はよー」



顔見知りとの砕けた挨拶、いつも通り。

色の褪せた日常に更に彩りを添えようと思ったら、あともう一手順加える必要がある。

こればかりは日程が合わないといけないから、私の努力では補いようはないものだけど。

なんて忙しなく首を回していると、ふと目に入った丸っこい横顔。



「こうちゃん先輩！」


「あ、Aちゃんおはよ。朝から元気だね」


「先輩こそ寒いのに手袋も無しで」


「ポケットがあるからいいのー」



某名曲に出てくるトナカイのように鼻を真っ赤に染めているのは、最近仲良くなったこうちゃん先輩基、渡辺航平先輩。

私の一個上の学年ながら割とフレンドリーに接してくれるし、失礼だとは分かってるけども行動の一つ一つにコミカルさが出てるというか。

とにかく気さくで、話もリアクションも面白くて聞き上手で。

恋かと言われれば少し迷うラインだが、尊敬に値するのは確かな存在だ。



「転んだら危ないですよ。こうちゃん先輩だから尚更」


「わ、今ちょっとバカにした!?」


「ひゃーごめんなさーい」



まるであだ名を悪口のように扱って揶揄する私に、ふてくされる先輩。

紅葉し赤々と色めく木々のように、水を得た魚のように、時間は弾む。



「あ、そういえばこうちゃん先輩。昨日の動画では活躍してましたね」


「あー…あれか、オセロ？」


「that is right. ホント知識量凄いんですね」


「そうかなぁ？」



謙虚にはしつつも嬉しさが顔に滲み出てるこうちゃん先輩、思わずない筈の尻尾と耳が見えてしまう。

動画というのは、彼が所属する企業が行っている活動の一環。

そう、性格もさながらキャリアまでとんでもないのだこの人。

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