Apatite

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三杯目を飲み干しながら、旅人の品定め。

寄生先は出来れば男性、色気を使えばコロッと堕ちる奴は少なからず居る。

あとは金目の物を持ってそうな人、そこら辺で大食い対決だとか言っててんやわんややってる人とかが該当する。

それにあまり腕っぷしの強そうじゃない奴、此方が返り討ちにあっては堪らない。



「……お、あれなんてどうかな？」



私が目を付けたのは、店の端のテーブル席で赤ワインを嗜む好青年。

艶やかな黒髪、重めの前髪に右頬の黶、西日の差し込む窓の外を見つめるその姿は中々様になっている。

その服も所持品も傷や褪せが少なくどこか新しげ、新人だろうか。

人当たり良さそう、中々に良物件じゃないか。

早速計画実行、何度も計画は考えたから完璧な筈だ。

店を出ようと彼の脇を通って、あからさますぎぬようにワイングラスを倒す。



「おっ……あっ、ごめん！私の鞄が当たったみたいだね……ワインは弁償させてくれない？」


「あぁ、そんなの大丈夫ですよ。幸い服も汚れてませんし」


「いや、私の気がすまないから……」



「ね？」と控えめな笑みを見せれば、それを何と取ったのか「ではお言葉に甘えて」と承諾する男性。

彼の分のワインと、ついでに私も同じものを頼んで相席に失礼する。

人との接触なんて、ちゃんとした計画さえ練れば容易いものだ。



「君も建国祭を満喫しにやって来たの？」


「いえ、この国の医療技術を拝見しに。俺はこの隣の国から旅を始めた者でして、まずはある程度知る国を回ろうかと」


「へぇ、じゃあルーキーなんだね。旅は楽しいよ、色んな体験が出来る……あ、敬語は外してくれる？見たところ年下でもなさそうだし」



話を交える内に、段々と彼の素性が暴かれてゆく。

上の名は伊沢、見立て通り旅は始めてだという青二才。

学校で勉学を積み、今は各国の医療法を参考にする為に近隣国を回る途中なのだという。

出国は二日後の予定、それまでに計画実行をせねばならない。

武器は腰のマシンガン、それから多分……背中の荷物の中にスナイパーライフルでもあるんだろう。



「Aさんは一人旅？女性だけだと不安じゃないの？」


「うーん……実際少し不安かな。誰かもう一人居れば……って思っちゃう」


「分かるなぁ、俺も初心者なのも相まって結構不安だし」



進行状況は順調、自分でも頬が緩んでいるのが分かる、何度もやって気づかぬ内に慣れてきたか。

物事が予定通りに進むのは嬉しいものだ。

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