Apatite

bad girl…?＿sgi ページ11

「ナイスガイの須貝でーす!!」



画面の中で元気に且つ陽気に挨拶する貴方が。



「おー綾瀬さん、奇遇だね。今日は午後まで講義あるの？」



わざと時間を合わせたコンビニで、私の浅はかな考えに気付かず会話を弾ませる貴方が。



「ねぇ、今日なんか難しい顔してたよ？わかんない所あったら教えるから、すぐ言えよ!!」



隣の席で講義をとって、にやけないようにと全集中力を働かせていた私に、疑いどころか気遣いを見せる貴方が。

ナイスガイな貴方が、好き。

今すぐにでも、全世界に聞こえる位の大声で愛を叫びたい位には絶賛片思い満喫中。



「須貝さんなら気にしなさそうだけども……」



私のほんの小さな呟きは、食堂の騒がしさに消えていった。

下心があって近づいたと知って良い気になる人は少ないと思う。

私は純粋に人として好いている……筈だが、やはり動画も見てるしファン染みた部分はある。

言葉は悪くなるが、あの爽やかで好い人感全快の彼にすり寄る人は多い。

私は違うなんて、そんな都合の良いことあっちは知ったこっちゃない。

彼女は愚か、友達、はたまた連絡先の交換なんて夢のまた夢になるだろう。

ため息と共に食堂のテーブルに顔を俯けば、疲れなのか何なのか、意識がぼぅっとしてくる。

話声に、食器のぶつかる硬い音に、ドミソドのアナウンス音。

ちょっと耳に音が入る位が、人は良く眠れるらしい。

そんなどうでもいい豆知識を頭に、世界は光を遮断して暗転した。



*



「ね＿＿丈＿？」



船の中に居るかのような、左右の振動が肩から伝わる。

やけに滑舌が良くて聞き取りやすい声に意識を引き戻されれば、段々と頭が活性化してくる。



「そうだ、午後の講義!!」


「うおぅびっくりしたぁ!?」



首がもげる位に勢いよく立ち上がれば、右側上部から聞こえるさっきと同じ声。

声の主はナイスガイ、驚きで見開かれた瞳は中々のレア物だと思う。

私の中での最新の記憶より人気の少ない食堂は、講義間の休みを寝過ごして過ごしたことを裏付けていた。

多分遅れてはいない、でもエネルギー源である昼食を食べ逃したか。

え、いやちょっと待て、須貝さんが横に居る？

あの須貝さん？なんで私を起こしてくれたの？



「随分熟睡してたけど、疲れてるの？大丈夫？」



情報の濃密さに戸惑う私を他所に、更に追い討ちをかける須貝さん。

その明るい顔はまるで発光体。

暗い影のような私は、その聖なる光に飲み込まれてしまいそうになる。

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