はな壱もんめ ・・Kei.Ryosuke・・

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部屋を出て涼介の一歩後ろをついて歩く。

向かいから若い女中が歩いてくるのが見えた。


彼女は私たちに気付くと廊下の端に寄り、頭を下げようとして、

そこで何かに気付いたように「あ、」と小さく声を上げた。



「涼介様…？」


涼介「あれ…菊乃か…？」



名前を呼ばれた途端、彼女の顔はぱぁっと太陽のように明るく輝いた。



「そうです、菊乃でございます…！」


涼介「わ、すっげー久しぶり。ここで働いてるの？」


「はい！先日入ったばかりで、まだ見習いですが」



頰を少し紅潮させ、いきいきと弾んだ声で話すその姿にはまだあどけなさが残っている。
歳は私たちよりいくらか下だろうか。



涼介「菊乃もそんな歳かぁ」


「もう16ですよ。子どもじゃありません。」


涼介「はっは、ごめんごめん」




やり取りから随分と親密な感じが伺える。
微笑ましく見ていたその時だった。




「涼介様、今日はどうしてこちらに…、」


「ちょっとアンタ！何やってんだよ！」




廊下の奥から年配の女中が血相を変えてやってきた。

彼女はすぐにその若い女中を廊下の隅に引っ張り、何やら耳打ちをする。


瞬間、彼女…菊乃の顔がさっと強張った。





.





「山田様、お嬢様、大変なご無礼を失礼致しました。この子はまだ入ったばかりで右も左も分からず…私がしっかりと教育を施しますので」


必死でそう訴える年配の女中の隣で、
菊乃は目を真っ赤にして唇を噛み、何度もこちらに頭を下げた。




涼介「そんな…顔を上げてください。菊乃とは故郷が同じで、子どもの頃はよく遊んだんです」




優しくそう言った涼介の言葉に、年配女中がぴしゃりと言い返した。




「そういう問題ではございません。将来この屋敷のご主人になられるかもしれないお方に、下っ端の女中がそのように軽々しく話し掛けるなど、あってはならないことです」


ただ事の顛末を見つめるしかできない私。


彼女達は何度も頭を下げて、
足早に廊下の奥に去っていった。

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