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A「やだよ…!」
決して障子の向こうには聴こえてはならないと、
小さく絞り出すように発した声
A「慧との時間がなくなったら、
私が私じゃなくなっちゃう…
だから、そんなこと、言わないで…!」
慧「っ、」
慧の唇の端っこが僅かに歪んだ。
その瞳が今にも泣き出しそうに見えたのは、
彼も私と同じ気持ちなんだって、自惚れてもいいのかな
涙で滲んだ世界の中で一瞬だけそう思った。
.
こちらに向かって歩いてきた慧と、
私が立ち上がったのと、ほぼ同時
伸びてきた腕が私を苦しいくらいにぎゅっと抱き締めた。
慧「………。」
A「………。」
背中に回した腕に、きゅ、と力を込めると、
それに応えるように慧の腕の力も強くなって、
静かな部屋に、二人の着物の擦れ合う音だけが響く。
彼のあたたかさを全身で感じながら、とくとくと速まる鼓動
だけど、不思議と安心感を覚えた…、
.
慧「…三日後、神社の階段の下で待ってる」
A「…!」
慧「久しぶりにさ、2人で街にでも行こ?」
その時、耳元で聴こえてきた、私にしか聞こえないくらいの小さな囁き
慧「もし屋敷を抜けて来れそうならおいで。
でも、無理はしないで。
もしその日に会えなかったら、手紙を書くから」
A「わかった…!」
思わず声が上ずる。
彼のきれいな指先が私の唇を抑えた。
慧「し…聞こえちゃう」
A「…!ごめん、」
障子の向こうには見張りの女中の気配がする。
思わず口元を抑えると、慧の頬がふ、と緩んで、
その唇がゆっくり、私のおでこに触れた。
慧「またね」
どこか儚くも見えるような、
柔らかい笑みを残して、
慧は部屋を出て行った。
.
彼のいた余韻に包まれながら、ぼんやりと撫子の花束を見つめ、
どうやって、屋敷を抜けようか。
まだ三日ある。
きっと方法はある…
そんな風にぐるぐると、思考を巡らせ始めた。
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ばるとくJUMP(プロフ) - はじめまして!私はもともと、ミステリアスでファンタスティックな作品が好きなので、この作品は本当にストライクです!しかも、伊野尾ちゃんと山ちゃんというくみあわせが作品にマッチしていて、すぐにのめり込みました。続きがもう待ち遠しいです!!!!!!!!! (2020年1月28日 20時) (レス) id: a73addc012 (このIDを非表示/違反報告)
中島理沙(プロフ) - この作品、とっても素晴らしいです!!! これからも応援しています!!! あ!ちなみに同じく私もPARADEロス激しい状態です笑笑 (2020年1月27日 6時) (レス) id: 848933ac82 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - 慧の正体…、いつ分かるのでしょうか…!!読んでてとてもドキドキします…!w (2020年1月18日 23時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - 初めまして!今作の『はな壱もんめ』!!私がPARADEのアルバムの中で一番好きな曲で!!すぐさま見てしまいました…ww。しかも主は我が推しのいの様!!楽しめる予感しかしませんw先、とてもとてもとても気になるので更新お願い致します! (2020年1月11日 8時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
この(プロフ) - 新作おめでとうございます!更新頻度が高くて凄く嬉しいです!ちゃみさんの作品の中で珍しいジャンルですごくどきどききゅんきゅんしながら読んでいます!これからどうなるのかすごく楽しみです!応援してます!! (2020年1月7日 18時) (レス) id: 5bc2eb359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年12月26日 15時