はな壱もんめ ・・Kei.Ryosuke・・

藍と紅 ページ3

_____________10年後









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「A様！何度言ったらわかるのですか！」



A「けほ、」



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ずるずる…と抹茶を啜っていた私は、背後から飛んできた声に思わずむせてしまった。


声の主は、幼い頃から私の教育係をしている幾松(いくまつ)。歳の頃は、私の母より10ほど上と聞いている。


代々貿易商をしている家に生まれた私。
生まれた時から、私の世話をしてくれたのは母ではなく幾松だった。

幼い頃から欲しいものはなんでも買ってもらえた。普段着の艶やかな刺繍の施された着物は、同い年の友達にいつも羨ましがられた。

家業に忙しい両親とほとんど一緒に過ごせない日々は、やはりどこか寂しかったけど、

それ以外はなんの不自由もなく過ごしてきた。





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A「えぇ、何ぃ？」


「何ぃ？じゃありません！茶わんは左手にのせて、軽く右手を添えて！何度言ったら覚えるのですか！」


A「あぁ…そうだっけ。」



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年頃を迎えていた私はその頃、毎日のように続く「花嫁修行」にうんざりし始めていた。


お作法なんて細かくていちいち覚えられない。おいしく残さずいただくだけで良くないかしら。


男の子が生まれなかったこの家にとって、家業を継いでくれるお婿を取ることは死活問題。

分かってはいるけど、気乗りしないし、ぴんとも来ない。



いつか、好きでもない人と結婚して、妻になって、後継ぎを産んで…


この先にそういう人生が待ってるのかと思うと、お稽古だっていまいち身が入らないのだ。

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