#47 ページ49
A「私初めてだよ…?
ピアノ聴いて涙が出そうになったのも、色が次々浮かんでくるのも、
慧のピアノが、初めて」
急にまくし立て始めた私を、彼はきょとん、と見つめているけど、
どうしても伝えたくて。
A「私全然音楽には詳しくないけど、でもね、
慧のピアノはなんかね、特別なんだよ。
ずっと聴いていたいの。だからそんなこと言わ…」
夢中で話していたら、急に慧が俯いて、綺麗な手のひらをパーの形にして向けた。
慧「ちょ、待って、ストップ…」
A「…?」
はっとして、口をつぐむ。
気が付いたら彼の方に体を向けていて、彼もこちらを向いていて、
狭い練習室の中で、膝と膝を付き合わせる形。
慧「それ以上はちょっと…
嬉しすぎるから…も、じゅうぶん…」
俯いたままの慧の耳の辺りが赤い。
反射的に私の頰も熱くなった。
A「…!」
だけど次の瞬間、今度は呼吸が止まった。
.
そのままゆっくりとこちらに体を傾けた慧が、
私の肩にぐい、と寄りかかるように、そのおでこの辺りを押し付けた。
慧「ごめ…ちょっとだけ…肩貸して」
その声は掠れていて、
少しだけ滲んでいるようにも聴こえて。
私の肩に伏せられた彼の目元はじわじわと熱を帯びているような気がした。
ふと、目の前に置かれた楽譜に、
さっき見た雑なフォントの文字で、書き込みがびっしりしてあるのが目に入った。
こんなに真っ直ぐ向き合ってるのに…
.
その時思ったんだ。
今まで、明るく飄々としている彼が紡ぐ繊細な音楽に、どこかギャップを感じていたけど、それは間違いだった。
ギャップなんてない。
慧は、とても繊細な人だ…
.
胸の辺りがぎゅうっと苦しい。
理由なんてわからない。
背中に回そうかと迷った手は、
少しの間空中を彷徨ってから、
彼のTシャツの端っこをぎゅ、と掴んだ。
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夜神月風火 - いつも楽しみに読んでます。ちゃみさんがだいすきなので、更新されるたびにうれしく思います!無理なさらず頑張ってください! (2019年8月15日 15時) (レス) id: d7aa5f874c (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - Twitterで2つ連載されると聞いてわくわくしながら待ってました!いつもちゃみさんの新作を見るとどんな伊野尾くんでも本当にきゅんきゅんするんです!2つ同時に連載されるのは大変かと思いますが、無理なさらないでくださいね!ずっと待ってます! (2019年4月5日 1時) (レス) id: 06987761d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年3月22日 0時