#44 kei (10/1) ページ46
練習室について、楽譜を取り出す。
弾き始めてみたけれど、なんだか今日はしっくり来ない。たぶん心の奥でイライラしているせい。
ピアノには嘘がつけない。隠そうと思っていた感情の起伏も、鍵盤の前では全て洗い出されてしまう。
ため息をついて、時間を確認しようとスマホの画面に触れる。浮かび上がった文字に思わず眉をしかめた。
『不在着信: 父』
またか。今日何度目かの不在着信。たぶん心の奥のイライラはこれのせい。
無視を決め込んでいたけれど、あまりのしつこさに耐えかねて画面をタップした。
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慧「…またその話?」
あー、やっぱ無視しとくんだった。
久しぶりに聞いたその声は、意図も簡単に心を騒つかせた。
慧「約束だったらちゃんと守るから。大丈夫だってば」
だいぶ抑えたつもりだったけど、苛立ちを隠せない。
慧「話ってそれだけ?忙しいから切るね」
まだ受話器の向こうでは何か言っているのが聞こえたけど、構わずに途中で切った。
通話を切った途端、目に飛び込んできたのは、書き込みだらけの真っ黒な楽譜。
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『いいか、慧。ピアノは大学までだぞ』
『教員免許はどうなってる?単位落とすんじゃないぞ』
『くだらない夢なんか見るな。現実を見ろ』
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受話器の向こうから聞こえてきたいくつかの言葉は、もう何回も繰り返し言われてきたこと。
地元の教育大学への推薦入試を蹴って、
大学までピアノを続けたい、と言った時、
ガチガチの教員一家で頭の固い家族はみんな猛反対した。
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平成大で唯一取れる音楽の教員免許
それを必ず取得して、4年後には地元で教師になること。
それが、この大学に入学する時の『条件』だった。
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夜神月風火 - いつも楽しみに読んでます。ちゃみさんがだいすきなので、更新されるたびにうれしく思います!無理なさらず頑張ってください! (2019年8月15日 15時) (レス) id: d7aa5f874c (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - Twitterで2つ連載されると聞いてわくわくしながら待ってました!いつもちゃみさんの新作を見るとどんな伊野尾くんでも本当にきゅんきゅんするんです!2つ同時に連載されるのは大変かと思いますが、無理なさらないでくださいね!ずっと待ってます! (2019年4月5日 1時) (レス) id: 06987761d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年3月22日 0時