#43 ページ45
光「俺ここで課題やってこーかな、Aは？」
A「んー、とりあえずアトリエに…」
と、立ち上がりかけてふと気付いた。
机の端っこに置き去りにされた、シルバーのペンケース。
A「あれ、慧忘れ物だ」
光「アトリエ行くついでに持ってってやれば？」
A「うん、そうする」
コーシー飲もう〜って立ち上がった光に手を振って、学食を出た。
.
.
練習室の棟に近付くにつれ、聴こえてくる音。リストのため息。
作曲者のリストは、この曲を練習曲として作ったらしい。
流れるような一定のリズムが繰り返される中にくっきりと浮かび上がってくるメロディは、確かに指さばきの練習になりそう。
もう少し聴いていたくて、中庭を歩くスピードが自然とゆっくりになる。
だけどなんだか今日は、その音がいつもと違う気がした。
.
少し尖っているような…
なんだろう、いつもみたいにさらさらと柔らかく流れる感じじゃなくて…
と、歩いていたら、ふとその音が止んだ。
.
あれ、止まっちゃった。
今日はもしかして調子悪いのかな、と思いながら、音楽部の棟に入っていく。
一番奥の練習室を目指して廊下を歩く。
ふふ、やっぱり今日も少しだけ開いちゃってる。
ノックしようとした時、中から慧の話し声がして、ふとその手が止まった。
.
慧「…またその話？」
…電話してる？
慧「約束ならちゃんと守るから。大丈夫だってば」
思わずびくりと動けなくなってしまったのは、
彼の声に聞きなれない棘が含まれているように感じたからで
.
慧「話ってそれだけ？忙しいから切るね」
プツ、と通話を切ると彼は、深い深いため息をついて、
片手で前髪をくしゃくしゃとやって俯いた。
.
こんな慧の姿を見るのは初めてで、少なからず動揺してしまう。
…声をかけるのは、もう少し後にしよう。
そっと練習室に背を向けた時、
ガチャン！
A「…！」
手の中から滑り落ちたカンペンケース。
慧「あれ、…A？」
名前を呼ばれ、思わずびくりと肩が動いた。
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夜神月風火 - いつも楽しみに読んでます。ちゃみさんがだいすきなので、更新されるたびにうれしく思います！無理なさらず頑張ってください！ (2019年8月15日 15時) (
レス) id: d7aa5f874c (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - Twitterで２つ連載されると聞いてわくわくしながら待ってました！いつもちゃみさんの新作を見るとどんな伊野尾くんでも本当にきゅんきゅんするんです！２つ同時に連載されるのは大変かと思いますが、無理なさらないでくださいね！ずっと待ってます！ (2019年4月5日 1時) (レス) id: 06987761d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2019年3月22日 0時
