#20 ページ22
そのメロディを聴いた覚えはなかったけれど、
優しく繊細な中にどこか、胸に迫るようなところもあって、
ストーリーがあるとしたら、きっと切ないだろう、
そう思わせるような曲だった。
聴いているうちに、どういうわけか視界がじわ、とぼやけてしまって、慌てて手の甲で拭った。
.
余韻を長く残して、彼の指が鍵盤から離れる。
気付けば無意識にぱちぱちと拍手をしている自分がいて、
彼の肩がぴく、と揺れ、振り返った。
慧「うーわ、ドア開いてた！？」
A「…うん」
慧「やっべ、防音室の意味ねぇ〜！」
彼はそう言って、さっきまで繊細な音を紡いでいた人とは思えないくらいにゆるゆると笑う。
慧「え、もしかしてアトリエまで聴こえてた？」
A「ううん、中庭」
慧「ふは、ごめんねーうるさくして」
言いながらピアノの蓋を閉じる。
よく見たら楽譜も何も置かれていなかった。
A「…うるさくなかったよ」
慧「ん？」
A「慧ってピアノ弾けるんだ」
慧「ふっは、弾けるよ一応。ピアノ科ですから」
A「そっか…！」
なんとなく光と同じ、音響とかコンピュータ音楽とか、そっちの分野の人だと勝手に思っていたから、
底抜けに明るいイメージの彼から、あんなに切なく繊細な音が紡ぎ出されるなんて心底意外で…
勝手にとくとくと速くなる鼓動
彼に気付かれないように、こっそり深呼吸をした。
A「…今の、なんて曲？」
慧「んー？しらない？これ、」
彼は、言いながら取り出したスマホの音楽アプリを開いた。
ピアノの旋律に乗せて、甘い歌声が聴こえてくる。
『題名のない物語 Yuya Takaki』…、
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夜神月風火 - いつも楽しみに読んでます。ちゃみさんがだいすきなので、更新されるたびにうれしく思います！無理なさらず頑張ってください！ (2019年8月15日 15時) (
レス) id: d7aa5f874c (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - Twitterで２つ連載されると聞いてわくわくしながら待ってました！いつもちゃみさんの新作を見るとどんな伊野尾くんでも本当にきゅんきゅんするんです！２つ同時に連載されるのは大変かと思いますが、無理なさらないでくださいね！ずっと待ってます！ (2019年4月5日 1時) (レス) id: 06987761d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2019年3月22日 0時
