桜雨、恋の音。・・Kei・・

#17 ページ19

『 慧: 待ち受けにした〜』




アトリエに着き、荷物を置いたところで、
ピコン、と鳴ったスマホに表示されたメッセージ。瞬時に反応して画面に触れる。




A「あ、これ…ふふ」




送られてきたのはスマホのロック画面だった。

この前の夜桜。私が撮って、送ったやつだ…



『A:実は私も、待ち受けにしてたよ』



絵文字をつけようか迷って、やっぱりつけないで送ったメッセージは、
すぐ既読がついて、ぽん、と返事が返ってくる。





『慧:まじ！』

『慧: おそろいー』




画面の向こうで今ごろ彼も、あの目尻をくしゃっとさせて笑ってるのかな。



.




『A おそろいだね』



なんて返そうか、散々迷って結局これだけ。
今度は既読がつかなくて、
でもそのテンポ感にほんの少しほっとして、スマホを置いた。




.




今日は週に一度の午前授業の日。

午後からは、皆サークルに行ったりバイトに行ったりするから、アトリエから見える中庭も閑散としている。



慧もこれからバイトとか行くのかな。
それとも何かサークルとか？
今日は中庭にはいないかな…



.




ぽーっとそんなことを考えている自分にはっとして、
慌てて手元に視線を戻す。
アトリエの棚にしまっていた、やりかけの作品を取り出した。




.




あの新歓の夜から何日か経ったけど、なんとなくこうして、メッセージのやりとりが続いている。


彼からの返信は、すぐ来るときもあれば、ずーっと時間が経ってからの時もあって、
でも私には、そのムラのあるペースが、返事を急がなくて良いよって言われている気がして、心地良かった。





.





アトリエの窓からは、春の強い日差しがさんさんと降り注いでくる。
今日はちょっと暑いくらいだな。
窓を開け放ち、作りかけの作品に手を伸ばした。

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