検索窓
今日:62 hit、昨日:3 hit、合計:269,137 hit

ページ4

和「あー、ちょっとね、取引先と飲むことになってさ。今終わったから帰るわ」



今、終わったから、ね。

高まった体温が、一瞬ですーっと下がっていくのを感じた。






和「今度の日曜日?いいよ。ソウタが行きたがってたとこでしょ?」




ソウタはもうすぐ3歳になる和くんの息子の名前。
ついでに電話の相手は美人でお料理上手って有名の彼より少し年上の奥さん。




くるりと背を向けて、ハンガーにかけてあったブラウスに袖を通した。




.




和くんに初めて会ったのは2年と少し前、短大を出てOLになったばかりの春のことだった。



新人教育係。
私の初めて出来た直属の先輩。
それが和くんだった。



よくある社内恋愛、よくあるシチュエーション。
仕事を始めて何かに躓く度に、私は彼に支えられて、乗り越えてきた。



いつのまにか2人で仕事終わりに飲みに出かけるようになり、いつのまにか手を繋いで帰るようになり、気が付いたらキスをして、今みたいな関係になっていた。





彼の左手の薬指には、出会った時から銀色の輪っかが輝いていたのは知ってたけど、


1度動き出した恋はもう、止めることができなくて、



いつか何もかもを捨てて私のところへ来てくれるんじゃないかって、夢みたいなことを考えてた時期もあった。



.




和「じゃ、俺行くわ」



電話を切った彼は、慌ただしく荷物をまとめ始めた。
ベッドの端に腰掛けたまま、バタバタと帰りの支度を始めた彼の姿をぼーっと眺める。



和「あ、これ置いてくね」


ぱさ、と無機質な音と共に、机の上にお金が置かれる。
いつだってそうだった。
彼と一緒にいて、お金を払ったことは一度もない。


A「いいよ、2人で過ごしたんだから割り勘で」


彼の中に少なからずある罪悪感がそうさせている気がして、いつだって面白くなかった。


和「そういうわけにはいかないでしょうが、」


ふてくされて言ったのに、彼はにっこり、仔犬みたいに笑って私のおでこに優しく触れた。


和「一人前にそんなこと言うようになって、泣き虫の新人さんが、」


A「いつの話ぃ、」



彼は口を尖らす私の頭をわしゃわしゃと撫でて、部屋を出て行った。



.



ゆっくりなんて、出来るわけがない。
一人残された部屋の中で私がどんな気持ちでいるのかなんて、彼にはきっと一生わからない。


机の上のお金をぐしゃりと掴んで、逃げるようにその部屋を出た。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (389 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1062人がお気に入り
設定タグ:Hey!Say!JUMP , 伊野尾慧 , 二宮和也   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 頑張ってください!更新楽しみにしてます!できればパスワード教えてください! (2018年7月23日 13時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
涼宮 - とても面白いです!パスワードを教えてくれませんか? (2018年7月21日 21時) (レス) id: 69077a28f6 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - 好きです!伊野尾さんののほほん感がよく描かれていて、リスペクト!尊敬してます。ちゃみさん、これからもゆっくりマイペースで大丈夫ですので、変わらず更新を続けて下さい!ずっと、応援します! (2018年7月18日 20時) (レス) id: 0cc6cf21ff (このIDを非表示/違反報告)
かんな(プロフ) - ちゃみさんの描く伊野尾くん大好きです、、!また更新たのしみにしてます!! (2018年7月18日 0時) (レス) id: 6d46aa0005 (このIDを非表示/違反報告)
希都 - ちゃみさん!私、こう言う切ない系のお話大好きなので、楽しく読ませて頂いてます!更新頑張って下さい! (2018年7月5日 21時) (レス) id: 6465792da0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年6月21日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。