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第4話 ページ16

駅で手に入れたマップによるとここに日本一大きな万華鏡があるそうだ。ただ道が怪しい。狭い上にすのこが置いてあるだけなのだ。これは疑って当然だろう。彼女も「これハッタリじゃないの…?」と顔を曇らせる始末である。僕も最大級にこのマップを疑っているが、書いてあるのだから存在するのだろう。とりあえず先に進む。
すのこを抜けるとそこは湿った芝生であった。煙突のようなものが中心に屹立している。そこには錆びた文字で「日本一の竪穴式万華鏡」と書かれたプレートが貼ってある。たしかに万華鏡だ。ハンドルを回すと絵柄がくるくると変わる。彼女は絵柄の変化に驚きつつもご満悦の様子。こちらを気にせず見入っている。すかさず僕はカメラを取り出す。が、子供が騒ぎながらやってくる。また邪魔が入った。とりあえずささっとシャッターを切る。帰ってから確認しよう。万華鏡の場所を子供たちに明け渡し、もとの商店街に戻ってくる。もうすでに夕方も近くなってきた。早めに夕飯を済ませてしまおう、と向かったのはこの辺りで人気のどんぶり屋、鳥喜多。タイミングが良かったのか人が並んでいる様子がない。中を見るとちょうどひと席空いている。名物の親子丼を2つ注文する。あ、これ美味いやつや。と舌鼓をうっていると次のお客さんがやってきた。まだ閉店時間には程遠いのに、もう終わりですか、と聞きながら。店員が言うには材料がもうないらしい。ということは僕らが最後の客だったということだ。何という運のつよさ。ギリギリセーフ。そういうこともありなおさらうまく感じた。店を出るともうすっかり暗くなっている。最後に何となく港へ向かう。港のコンクリに腰掛けながら話をしていると、彼女が急に顔を近づけてきた。反射的にすかさず唇を奪う。やっちまった。ファーストキスじゃないか。もう少し心の準備が欲しかった。暗くて彼女の表情はよくわからないが、なんとなく気まずい。それから無言で家まで帰ってしまった。明日ちゃんと弁解しよう。
万華鏡で撮った唯一の写真を確認する。彼女は写っているにはいるのだが、腕だけしか写っていなかった。僕はその写真をそっとプリンターに送信し、布団に倒れこんだ。彼女を画面上に捉えられただけでも上出来だ。次もこの調子で写真を撮っていこう。

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設定タグ:男主 , 長編 , 創作   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:チャルさん x他3人 | 作成日時:2020年3月30日 23時

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