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side:JM
Aとは食事に行くだけの関係になった。
お互い忙しいから本当に時々、だけど。
Aはドラマの撮影のこと、
一緒に撮影しているスタッフさんやキャストさんのこと、
ケータリングで食べた美味しいものについて話して、
僕はメンバーやマネージャーのこと、
バラエティーでやったこと、
歌番組のこと、
そして美味しかったもののことを話す。
それから、Aはなんてことないように僕が知らないことも話すんだ。
『ねぇ、知ってる？三毛猫ってメスが多いのよ？』
「そうなの？オスは少ないんだ」
『ううん。
オスはね、滅多に生まれないの。いないも同然、ってくらい。今日テレビでやってた』
「…じゃあ出会えたら、本当にラッキーだね」
『そうね。もし出会えたら、きっと私に会うためだけに生まれてきてくれたんだ、くらい思っていいかもね』
なんて笑うもんだから、僕もつられて笑った。
Aの感性が好きだ。
空を見れば『この色、絵の具で作るなら何色を合わせればいいんだろうね』とAが話したことがある。
水色とは言わない。
空の色だって毎日違う。一瞬、一瞬が一期一会だとAは言った。
僕には無い、美しい言葉だと思った。
綺麗、という言葉は使わず、見たものの美しさを伝えられる彼女の言葉は僕の胸にいつも響きじんわりと染み込んでいく。
彼女の愛しい唇から出た言葉で、最近の僕が作り上げられていくようで、嬉しい。
「……僕も、三毛猫のオスかな？」
『え？』
「Aに出会うために生まれてきたのかも」
テーブルに置いていた手に、僕のを重ねて握る。
女の子をたぶらかす男を演じたいわけじゃない。Aがいると心からそう思えてしまうんだ。
恥ずかしがるように『もう、』と頬っぺたを赤くするAを前にしたら、本気で、恥ずかしげも無く素直に言えてしまう。
『……皆に言ってないよね…？』
「まさか！Aにだけだよ」
『でもジミンは素敵だから他の女の子達も放っておかないはずよ』
目を細めて疑うA。
チープかもしれないけど、そうとしか言いようがなくて…
「同じアクセサリーをプレゼントしたら、僕にはAだけだって信じてくれる…？」
『…誰にでも渡せるでしょう…？』
「…芸能界が長いと、中々信じてもらえないね」
『子どもの頃から色んな人を見てきたからね』
「でも恥ずかしがるんだ」
『あなたの前では別なの』
本当にずるい人だ。
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作者名：哺乳瓶
| 作成日時：2023年5月23日 18時
