彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ4)

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213.恋しいページ4

「何で……？」

雨粒をクリスタルのようにキラキラさせ髪に揺らす二宮さん

こんな時にまで綺麗で

やっぱり私には彼を手離す術も選択肢も持てなかった

倫也「ごめんね、泣いてる女の子１人にしておけないし」

泣いてたって…

慌てて目を押さえるけど目の充血でわかってしまったんだろうか

本当に何処までも情けない

倫也「だからって俺が慰めちゃったらまずいでしょ？」

そう言って中村さんはスマホの画面を見せるとLINEの二宮さんとのトーク画面

…全然気づかなかった

二宮「倫也さん、ありがとうね」

困ったように笑いながら店内に入る二宮さん

倫也「喧嘩はよくないよ」

数時間ぶりなのに

二宮「喧嘩だったら簡単なんだけどね」(笑)

数日ぶりに会ったような感覚は胸の中にかかる霧のせいだろうか

倫也「ん？」

二宮「いや、何でもない」(笑)

クシャッと撫でられた頭

二宮「Aちゃん、帰ろ？」

笑顔は変わりなくて

「………はい」

でも、それが正反対の意味を持っているような胸のざわつき

二宮「じゃ、また」

倫也「Aちゃんもまたね」

「はい、ご馳走さまでした、おやすみなさい」

倫也「おやすみ、バイバイ」

お店を出るとタクシーをつかまえるために通りに出た二宮さんの背中に

「二宮さん、ごめんなさい」

ただ謝るしかできなくて

タクシーが停まると開かれたドアに彼は振り返って

二宮「話は帰ってから、いい？」
　

優しく瞳を歪める

「はい」

タクシーはマンションまでそんなにかからず

だけど黙ったままの彼に時間は凄く長く感じた

二宮「Aちゃんは大きい方のバスルーム使って」

「はい」

マンションについても二宮さんはまともに私の顔を見ることはなくて

言われるがまま、お風呂に入ると

何だかどっと疲れが襲ってきた

お店であの後オーナーから言われた言葉

やっとこの間の答えを出したばかりなのに

また出せない答えに頭が真っ白になる

どうしたらって考えたら

その答えは1つ…

寝るしたくをすませ寝室に入ると

二宮「ちゃんとあったまってきた？」

「はい」

既に彼は他のシャワーブースを使ったのか既にお風呂もすませTシャツにスエット姿でベッドに腰かけていた

二宮「おいで？」

横たわりあげた彼の腕におさまるように私もベッドへ

シャンプーと

二宮さんの香り

ここにきてまだ少しなのに

こんなにも恋しいこの場所から私は離れられるんだろうか