彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ29)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:275,225 hit

238.悪いコト←10/17 ページ29

ロンドンの街を二宮さんと手を繋いで歩く日がくるなんて

半年前の私に教えてあげたい

オーナーの仕立てたスーツはダークブラウン

タイトなシルエットのブラックコート

どちらともにクラシカルなデザイン

何を着ていても二宮さんは素敵だけど

スーツ姿の彼が格段に美しく魅惑的だ

二宮「疲れてない？」

不意に覗きこまれた顔に

「えっ、えっと………わかりません」

心臓が飛び跳ねる

二宮「え？」(笑)

正直朝も早かったし、慣れないドレスに靴、慣れない場所、挨拶は当たり前だけど私には知らない人ばかりで精神的にも肉体的にも絶対に疲れてはいると思うけど

「地に足がついてないような…ふわふわしてます」(笑)

隣にいる二宮さんの存在がそれを全てとばしてしまう

二宮「そんな可愛い事いわれちゃうと悪いコトできないじゃん」

艶やかな瞳に強かな視線、だけどそんな事を無邪気に言うから

「あ……の、そのっ」

何て答えていいかわからないだけど終始彼はご機嫌に笑い

二宮「何てね」(笑)

からかうその悪戯っ子な言葉にすら胸が甘く疼いてしまう

「二宮さんっ」

からかわれ恥ずかしさに彼と繋いだ手を離そうとした時だった

ぎゅっと握りかえされ

グイっと引っ張られた腕に

彼の方によろける身体

耳に寄せられた唇が

甘く

低く

囁く

二宮「…スルに決まってるでしょ」

バっと耳を離し

「っ！？」

彼の顔を思わず見ると綺麗に持ち上がる口角に蔑む瞳が私を簡単に虜にする

カーッとなる身体に

彼は私を弄ぶように今度は天使のように笑うから

二宮「つきましたよ、お姫様」(笑)

私だけが期待したみたいで余計に恥ずかしい

彼の言葉に逃げるように向けた視線の先には彼の滞在先であるホテルがあった

ロンドンには数多くの最高級老舗ホテルがあり

二宮さんが滞在しているホテルはその中でも別格で高額なホテルだと有名だ

ロンドンは日本とは違い新しいものではなく昔からある建物をそのままにまた新たなものにする

このホテルもある伯爵のお屋敷だったと聞いた

特別決まった看板もなく何処にもホテルとはない

二宮さんの手に引かれるままに歩いて行くとドアマンが立っていた

重厚なドアが開かれると

そこはタイムスリップしたような景色が広がっていた

「すごい……ですね」

イギリスらしくシンプルな中に豪華さが見え隠れするデザイン

二宮「Aちゃんの好みかなって」

「私のために？」

二宮「他に理由がある？」