彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ25)

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234.確かめて？ページ25

オーナーのその言葉と私の後ろを見た視線に

考えるより先に胸がざわつく

「………う…………そっ」

打ち上げ花火にかきけされた声

だけど

打ち上げ花火を見上げる人々をかきわけ

二宮「そんな驚く？」(笑)

彼はそれすら取り零さず私を強く抱き締めた

「だって、待ってるって、電話でっ………だから日本にっ」

欲しくて

欲しくて

何一つ取り零したくないのに

決壊した涙腺に彼の香りすら受け止めきれず

だけど

二宮「待ってたよ、ずっと…ずっとこの腕に抱き締める事を」

花火に消されないように耳元によせた彼の唇がその甘い声を響かせる

「私もっ…………早くっ………会いたかった」

言葉にならないっというより感情が先走り過ぎてどうしていいのか自分で自分がコントロール出来ない

二宮「うん」(笑)

クスクス笑う声を直に聞いたのはいつ以来だろう

電話できくその声でもじゅうぶんすぎるって思ってたけど

比べ物にならないって

私が落ち着くまで二宮さんはずっと抱き締め優しく背中を撫でてくれた

そして落ち着くとぼんやりする視界に彼の肩越しに見えた人達にハッとする

「オーナーっ」

当たり前にオーナーはいるわけもなく

なんていう失態

って頭を抱える前にグイッと引き寄せられた頬

包まれた両手はオーナーの手ては違い冷たくて

二宮「今は俺だけ見てくれる？」

悪戯に笑うその瞳に

近づく唇

「えっ」

グイッと重なる前に彼の唇を押さえた

綺麗な瞳だけが見えて

手のひらに彼の口角が上がるのを感じる

蔑む瞳を前に私は無力で

ゆっくり引き剥がされた手

二宮「それはないでしょAちゃん」(笑)

「だっ、だって外ですよ」

二宮「ここは日本じゃないし」

妖しく艶やかな瞳

…ああ

駄目だって

二宮「今は皆見向きもしない」(笑)

彼の見上げた瞳に打ち上がった花火がキラキラと映りこむ

「会いたかった…本当に…夢じゃないですよね？」

彼の美しさには逆らえないって

二宮「確かめてごらんよ」(笑)

思い知らされる

自ら彼の頬に触れ

背伸びに近づく距離

「夢…みたい」

重なった唇は離れていた距離を埋めるように何度も何度も重なる

乾いた唇が満たされるように濡れ

抱き合うよりも深くお互いの熱を感じる

寂しかった

恋しかった

どうしようもなく貴方が好きだって苦しかった

なのにこの一瞬でそれを忘れさせる貴方は

王子様じゃなくて

魔法使いなのかもしれない