229.女神 ページ20
櫻井さんは直ぐに帰り
玄関の鍵をかけると大きな箱をベッドの上においた
箱には何処かのブランドの名前が刻印され
光沢のあるブラウンのリボンが丁寧にかけられていた
まるで浦島太郎が玉手箱を開ける時のよう
ドキドキとワクワク
でもそれに匹敵する程の嫌な予感
衣擦れの音にリボンをほどき
ゆっくりと箱の蓋をあける
「…………き………れい」
そこには
シアーグレーのドレスが入っていた
それはまるで女神のような…
日の光に当たるとシルバーのようにも見えるその理由は
幾重にも重なるチュール
レースにフラワーにビーズをふんだんに使った刺繍
レースのハイカットネックにミモザ丈、落ち着いたエレガントさがあると思わせ
バックはかなり背中があいていてセクシー
だけどウエストはコルセットリボンの編み上げになっていて愛らしく
女性が全て欲しいものを叶えたドレス
そしてそえるように入っていたシルバーの繊細なデザインのヒール
ドレスも靴も自分が想定していた以上のパーティーなんじゃないかっと
慌てて櫻井さんからもらったスケジュールを見た
招待状の内容を確認するもそれはシンプルなもので
ドレスコードには「フラワー」
ドレスコードが花？
だから私のこのドレスには花の刺繍がふんだんにあるのか
っなんて変なところに感心している場合じゃなかった
パーティー会場や招待者リスト
当日に動くスタッフのリストを見てクラクラする
…いったいどんなパーティー
へなりと床に座りこむと当日が不安でしかなかった
しかも今回は二宮さんもいなければ私は付き添いでもない
主催者側なわけで
こんなパーティーをパーティーが苦手なオーナーをリードして進められるだろうか
それにしてもオーナーはこういう場は極力行かない人だし
どうやってオーナーにOKをもらったんだろ
考えても仕方ないと溜め息を大きくつくと
大丈夫だと確信した通り試着したドレスはピッタリのサイズだった
でも、イギリスに来て少し痩せたんだけどな…
その誤差も計算済みのようにピッタリだった
ドレスは丁寧にハンガーにかけ
朝の支度を慌ててすると
スケジュールと資料を手に
やっと１日がスタートだと部屋を出た
オープニングパーティーの準備はほとんどないものの招待者の名前を覚えるのはかなりの苦労
しかも日本人じゃない横文字ばかりの名前
ますます頭に入らず
時間が欲しいっと思えば時間はあっという間に過ぎていった
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年9月22日 9時
