38.社長のお気に入り←1/26 ページ8
"そんな所が好きです"
好き…？
好き…って
いや、そういう意味じゃない
あたふたする私に櫻井さんはただフワっと笑う
櫻井さんには当たり前なような空気
そうよ
それだけ
櫻井さんはただ私がこんな時にまで仕事の事を考えてい私にフォローを入れてくれただけ
その"好き"が例え本心だとしても
"love"じゃなく"like"だ
櫻井「Aさん、コート」
お店に着くと慣れたようにお店の人に名前を告げ
私のコートを預けてくれた
「あっ…すみません、お願いします」
櫻井さんは不思議な人だ
仕事も出来て
紳士的で
そしてこんなにも格好いいのに
櫻井「今日はありがとう」
相手に威圧感を全く与えない
二宮さんとはまた違う意味で人の心に溶け込むのが上手な人だ
「え？」
緊張していたけど櫻井さんのおかげで食事も楽しくて
デザート後の紅茶を口にした時だった
櫻井「気乗りしないお見合いだったでしょ？」(笑)
紅茶のカップを静かに置いた彼は何処か楽しげに笑う
「…はい」(笑)
櫻井「遠藤さんとはさ、父親と遠藤さんが友人でね、家族ぐるみの付き合いで」
遠藤様と古くからのご友人って
櫻井さんのご実家もきっといい意味で普通のご家庭じゃないんだろうな
櫻井「父と母と遠藤さんの奥さんとで食事をしてた時に俺がいつまでも結婚しないからって話になって…で、遠藤さんの奥さんがいいお嬢さんがいるって」
「私に声がかかったんですね」(笑)
櫻井「まさかAさんがくるとは思わなかったから俺も午前中にギッシリ仕事入れてしまって」
「いえ…お忙しいのに本当にすみません」
櫻井「Aさんが来るってわかってたら今日は半休じゃなく休暇申請したのに」
櫻井さんはさりげなく女の子にお砂糖を与えるのがうまい
涼やかな笑顔でそんなこと言われたらときめかない女子はいないんじゃないかな
私も少なからずとも目の前の王子様とのこの時間にドキドキする
「櫻井さんこそ気乗りしないお見合いでしたよね」(笑)
だけど高嶺の花に恋するのはもうやめたい
そんな事を考えると頭の中に現れるのはやっぱり二宮さんで
胸が押さえ込まれるように苦しい
それを溶かすように紅茶を口にした
櫻井「ここに来るまではね」
櫻井さんのリップサービスを真に受けないようにと心に言い聞かせるのに
「そんな…」
なのに
櫻井「Aさんが社長のお気に入りじゃなければお見合いの話進めてもらってましたよ」
「…え？」
私の心は簡単に引き寄せられてしまう
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作者名：2-38
| 作成日時：2018年1月16日 10時
