36.運命の悪戯←1/23 ページ6
「オーナー、すみませんがあとはよろしくお願いします」
お店の定休日である水曜日の午後
土日の休みは出来ない私にお相手が休みを合わせてくださりお見合いは今日になった
それでも終わらせなければならない仕事があり午前中だけはお店に来ていた私
大野「…本当にいいの？」
オーナーの言葉に視界に見えた二宮さんのスーツは
完成した姿に私を追い詰める
それにそっと目を瞑り
「オーナーがそんな顔しないでください」(笑)
オーナーに笑いかける
帰り支度をした私に普段なら見送りなんてしないオーナーが作業部屋から店先までついてきた
不安…いや…寂しそうな視線に何故か罪悪感を覚えた
何も悪いことなんてしてないはずなのに
全てを見透かしたようなオーナーに
いたたまれなくる
「美容室の時間もあるので行きますね」
大野「いってらっしゃい」
冬にしては暖かな日差し
美容室までの道のりに頭に浮かぶのは"彼"のことだけだった
それも
もうすぐ終わる…
今週末…土曜日
二宮さんにスーツを受け渡す日だ
それは彼に会える最後の日
お見合いの場所は有名ホテルの中にあるフレンチレストランだった
畏まるのもと言って持ち合わせの時だけは仲人である遠藤様がいてくれるらしいが
予約の入ったフレンチレストランはお相手と私の二人だけでとのこと
ホテルロビー横にあるカフェに遠藤様の後ろ姿が見え
店員さんに伝え案内される席
お相手はまだいなくてほっとした
「遠藤様、お待たせしました」
遠藤「Aちゃん！あら、今日は一段と綺麗ね」
「いえ」
慣れないスカートに慣れないおろした髪
慣れないヒール
だけど笑顔の遠藤様にお見合いには合格点だったんだと安心した
お相手の事は全く聞いていないから
今のうちにと思っていたのに
遠藤「お相手の方まだ仕事が終わらないらしくて…っていらっしゃったわ」
私の後ろに視線を向けた遠藤様は大きく手をふった
心臓の鼓動が緊張に加速する
とりあえず仕事用の笑顔を顔に貼り付け振り向いた
でも私の心臓はこちらに真っ直ぐ走りよる人物によって止まった
洗練されフルオーダーだとわかるブラックスーツ
お洒落だけど主張しすぎないブルーのネクタイ
そして手を上げた袖からのぞく趣味のいいカフスボタン
そして誰が見ても息を飲むようなイケメン
それが私の知り合いだなんて
櫻井「すみません、お待たせしました」
「さっ、櫻井さん！？」
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作者名：2-38
| 作成日時：2018年1月16日 10時
