彼のスーツを脱がす時 2 【NINO】 (ページ17)

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47.境界条件ページ17

静かな部屋

「…他の女性にそれを渡して欲しくなかったんです」

私の声が時間を止める

二宮「だから、何で？」

恥ずかしくて

惨めで

それでも彼は私を逃がしてはくれない

「っ…」

"何で"なんて

その正解がわかってるから出てくる言葉だ

だから言ってしまえば簡単なのに

その簡単なことができない

噛んだ唇に

彼が不意に優しく微笑んだ

二宮「ごめん、意地悪が過ぎたね」

その優しさが痛いのは何でなんだろ

二宮「Aちゃんは…さ？何で俺が須永さんからのネクタイを受け取ったと思ってるの？」

無理だって物理的にわからせたいのか

「それは」

須永さんは言ってた

今まで二宮さんはプライベートな贈り物は受け取ってくれなかった

でもそれを彼は受け取った

それがどういう意味なのか

恋愛に疎い私にだってわかる

だけど

彼は

私の考えを簡単に覆した

二宮「貴女が選んでくれたとわかったからだよ」

「…え？」

頭が真っ白で間抜けな声しか出ない私に

悪戯な瞳に試すような視線で上目遣に私を見る彼

二宮「その意味…わかる？」

低くて甘い声が蜜のように私の心を惑わせる

そんなことあるわけない

「わから………ない………です」

でもって…

二宮「Aちゃんって案外嘘つきだね」(笑)

胸が痺れるような甘い笑顔

二宮「呆れられるかもしれないけど」

鼻に指をあてスンっ息を吸う

二宮「格好悪いけど」

バツが悪いのか薄い唇を手でかくし

反らしたままの瞳に言葉を選ぶように話す彼

何か覚悟を決めたようにゆっくりとこちらに視線を向ける彼に

二宮「貴女の上司に嫉妬して」

鼓動が加速して

二宮「貴女にお見合いなんてさせたくないって」

身体中に熱が駆け巡る

「どう…して？」

二宮「…狡いのはどっちよ」(笑)

意地悪く笑う笑顔ですら焦がれる

二宮「俺は理性的な人間のつもりだけど貴女のせいで境界条件次第で簡単にそれは覆ってしまうって気付いたの」

「難し過ぎてわかっ…」

ギュっと捕まれた手首に

抱き締められた身体

二宮「だって悔しいじゃん」(笑)

耳元に聞こえる声は擽るようなのに

「どういう意味…ですか」

抱き締められた腕は苦しいくらい強くて

二宮「理性的な人間のつもりだけど、貴女に関してはどうもそうじゃないみたい…感情を抑えきれないの」

真新しい布の香りじゃなく

彼の優しい香りが身体中を満たした時

二宮「…Aちゃん…貴女が好きだ」

彼の甘い声が心臓を止めた