彼女のルージュを落とす時１ (ページ10)

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09.「ただいま」の権利ページ10

華やかな場所も

賑やかな時間も

きらびやかな人達も嫌いではないけど

きっと一生慣れることはなくて

私には…っというより、二宮さんがイメージし小山さんが選んでくれたイブニングドレスが

いつもとは違い深紅に染まったその艶やかさに身の置き場に困る

今日は二宮さんの会社の創立記念パーティー

二宮「Aちゃん、大丈夫？」

二宮さんは私が仕立てたスーツをみにまとい

「はい」

私のスーツをそのもの以上に見せてくれるほどに魅惑的だ

二宮「何か飲み物を」

普段は相変わらず着なれた洋服ばかりで

「私の事は気にしないでください、まだ挨拶がありますよね」

なのにスーツをちゃんと着こなせる

二宮「ごめんね」

スーツにはただ着るだけではなく

TPOに着こなしのマナーがある

彼はそれをもそつなくスマートにこなしているからこそ魅惑的だ

二宮「直ぐに戻るよ」

「はい」

華やかさに目眩をおこすまえに履きなれないヒールをイブニングドレスの裾を少し持ち上げ見る

深紅のドレスにあわせた華奢なヒールは繊細なクリスタルが幾重にも重なり

まるでおとぎ話のお姫様にでもなったようで

遠くにビジネススマイルで笑う私の王子様を見た

『お寂しいですか』

自分の心情が声になって聞こえハッとして振りかえると

「櫻井さん！？」

そこにはいつもながらに溜め息が出るほどに洗練されたスーツ姿の櫻井さんがいた

櫻井「ご無沙汰しております、Aさん」

飛行機の時間が天候で遅れたためパーティーにはもしかしら間に合わないかもって

「今？」

櫻井「はい」

イギリスで大変な時にお世話になったせいか櫻井さんを見ると安心するというか落ち着く

「お帰りなさい」

私の言葉に答えるように目尻にシワを寄せ優しく微笑み唇を開いた時だった

櫻井「ただ…っ！？」

急に後ろから現れた二宮さんが櫻井さんの口をふさいだ

ビックリた目に二宮さんを見る櫻井さんにニッコリ笑う二宮さん

二宮「″お帰りなさい、櫻井さん？″」

唇を塞いでいた手を振りほどき

櫻井「どういう迎えかたですか社長」

後ろにいる二宮さんに呆れ顔の櫻井さん

二宮「Aちゃんからの″お帰りなさい″だけでじゅうぶんでしょうが」

だけど二人とも楽しそうで

櫻井「は？」

二宮「″ただいま″を言う権利まではあげないよ」

櫻井「…相変わらずですね」(笑)

二宮「お帰り」

櫻井「ただいま戻りました、二宮社長」

私も久々に並ぶ二宮さんと櫻井さんに緊張がほどけた