彼女のルージュを落とす時１ (ページ9)

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08.ジンクス【side NINO】ページ9

小山「社長、あと5分程でご自宅に到着いたします」

小山は翔ちゃんと正反対で送迎の車では無言だ

「…ああ」

まぁ、関係性で言ったらビジネスオンリーだからそこは徹底してるんだろうけど

小山「明日は予定どおり朝8時にお迎えにあがります」

「悪いね、ありがとう」

でも、日本に彼女が戻ってからは少し変化があって

「そういえば、どう？」

車の窓からマンションが見えてきて仕事のスイッチを切るようにタブレットを閉じ眼鏡を外す

小山「式場の方はいくつかご提案させていただいたのですがどれも大野さんにはピンとこないようで」

「そうか…」

式には当たり前だけど招待客がいるわけで
式場はここだっていう拘りがなければ明日にだっておさえられるけど、招待客のスケジュールは流石に急にどうにか出来るわけもない

小山「3月14日にっとなると時間に余裕があまりないかと」

でも

まぁ

「そこは諸々櫻井さんが根回ししてくれてるから」(笑)

っていうのがあるからね

無茶もできるわけ

小山「あとはドレスも」

そうそう小山さんの変化

例えば

「それなら…」
小山「それは駄目です」

こういうところ

「いや、まだ何にも言ってないですけど」(笑)

小山「大野さんと一緒に選ばれるなら式場だけにしてください」

「えー」

ふざける俺に対して

小山「"えー"じゃなく、ドレスは社長にだけはご遠慮いただきたいんです」

大真面目な視線をバックミラーごしにおくる

「なにそれ、俺のセンスが悪いって？」

小山「そうではなく、式前に花婿が花嫁には会ってはならないからです」

急に何を言い出すかと思ったら誰よりも現実派な小山らしくない一言に思わず声がひっくり返る

「は？」(笑)

小山「欧米にあるジンクスです」

マンションの駐車場に車をとめそそくさと降りるとクソ真面目な顔で後部座席のドアを開けた

「あなた、そういうの信じる人だったけ？」(笑)

小山「全く」

荷物を取り車のキーを俺に返すと

「いいきるね、ならなんで」(笑)

無駄なくエレベーターのボタンを押し程なくして開かれたドア

小山「それは社長ご自身がいずれわかります」

小山の部屋にはとまらないエレベーターだから俺だけでのるとお疲れ様でしたと労うように下げられた頭が見えた

「それなら、スケジュール調整頼むよ」

小山「社長！」

「違う違う」(笑)

俺の言葉に勢い良く頭をあげる小山さんに笑う

「ドレスのかわりに式場は俺が一緒に選ぶから」

小山「かしこまりました」