彼女のルージュを落とす時１ (ページ25)

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24.最後の夜ページ25

二宮「お帰り」

オーナーに送ってもらい
いつものようにマンションのセキュリティを解除し部屋に入ると二宮さんがエプロン姿で出迎えてくれた

「二宮さんっ」

二宮「そんな驚くとこ？」(笑)

デニムのエプロンが可愛いくて
でもそれをこえて彼自身が可愛いくて玄関から一歩も動けない私

「だって、今夜は遅くなるって…」

二宮「じゅうぶん遅い時間ですけど？」

そう言ってポケットからスマホを出した彼は時間をわざとらしく嫌味な笑顔を作って見せた

「え、あ…」

彼のスマホのホーム画面に見えた時間

日付は変わっている時刻

こんな時間になっている理由を言わなきゃ…いけないよね…

二宮「どうかした？」

「いえ……………オーナーがお店に」

二宮「そっか」

オーナーが今夜私に会いに来ることも二宮さんには想定内だったのか一言だけそう言うと

私の髪をクシャリと撫でた

そして切り替えるようにニッコリ笑う彼

二宮「ごはん、出来てるけど食べれそ？」

「…え？」

リビングに向かう彼に急いで靴を脱ぎその背中を追う

「…………これ、二宮さんが？」

リビングにあるダイニングテーブルには既にテーブルセッティングされていて

キッチンからは美味しそうな香りが流れてきた

二宮「ん、今回は小山さんにはいっさい手伝ってもらってないよ？」(笑)

「手！洗ってきますね！！」

急いでコートを脱ぎ手洗いをすませリビングに戻ると私の座る椅子を引いて待っていてくれた彼

腰をゆっくりと下ろすと

彼も向かい側の席に座る

「いただきます」

二宮「どうぞ、召し上がれ」(笑)

私が食べるまで彼は箸も持たずにただ私を楽しげな瞳に見ていた

「んーっ…………おいしっ」

二宮「それはよかった」

安心した笑顔に彼もようやく箸を手にした

「…でも、何で」

二宮「Aちゃんに最近作ってもらうばかりで俺は作ってなかったなって」

「そんな…」

どちらが作るという決まりも考えもなかったけど
私の方が帰りも早いわけだし

私の仕事も二宮の仕事も忙がしい時は小山さんが用意してくれたり

少なからずとも私には何の負担もない

二宮「貴女に手料理振る舞えるのも最後だしね？」

最後という言葉に嫌な高鳴りを覚えたのは一瞬

「え？」

彼は意地悪く右の口角を綺麗に持ち上げ

二宮「″カノジョ″の大野Aさんには」

してやったりに上目使いに笑う

二宮「明日からは俺の″オクサン″、二宮さんでしょ？」(笑)

「そっ、それは」