帯を解いて君を抱く

三十八 ページ40

「夫婦騒動はもうこりごりです」

立花さんと昼食の準備をしながら話していた

昨日あのような事があり今に至るが福山さんも普通の対応で切り替えの早いことに驚いた。

現在、味噌漬けしたきゅうりを切りながら立花さんと話しているが


「まぁ、夫婦騒動はもうないな」

「あの男性も焦ってたんでしょうね。父親が亡くなって自分が跡取りだとなれば」

「それでもやり過ぎだけどな」

立花さんは南瓜を二つに切りながら話していた


今日は南瓜の煮付けにしようかな


すると立花さんが私にあることを言ってきた


「最近、女が人攫いにあうのが多いらしい。なぜだか分かるか？」

「人攫いですか？また物騒な」

「農村の若い娘が次々にいなくなっていているらしい。それが、どれも歳はお前ぐらい。帰ってきたやつもいないしで地域では大混乱が起きている。

神隠しという噂もあるが俺は人攫いと考えていてね。なにか裏があると思うんだけど…同じ年頃の子ならなんて言うかなぁって」


立花さんは私の顔を覗いてきて言った。

私も農村地域だけど考えられるのは


「女の人を必要とする仕事…とか？
例えば花魁もですがお偉い役人のところに嫁がせるとか」

「流石、ご名答。
俺今それを探してるんだよ。嫁ぐの方にね」

立花さんと同じ考えだったんだなと思い少しほっとしたがふと、それをほかの人は知ってるのかな？と疑問に思った。

もしかしてこの人


「1人で調べてるんですか？」

「あぁ、一人で調べてる」

何故

この人なら櫻井さんとかにでも相談できそうなのになんで一人で？

黙って考えていると私に気づいてか立花さんは私が切ったきゅうりを1口食べながら答えた


「花魁をしてる身として。
好きでもない男の相手をするのは嫌だろ？
それに、酷い話だと思ってな」


自分と攫われた人を重ねたのか

立花さんを見てるとあの綺麗な着物を着ている時の立花さんを思い出した。

あれを着ながらそう考えていたのか

なんかこの人の心の中が見れた気がする。

私は立花さんに向かって


「手伝います。私も。
同じ年の子がいなくなるのは心が痛いです」

そう答えていた

すると立花さんは驚いていたがクスッと笑い

「ありがとう」

お礼を言ってきた

「いいえ。大丈夫です！」

なんか、嬉しいな




「あ、きゅうり食べないで下さいね。
皆さんの分があるので」

「ちぇっ、気づいてたか。」

三十九→←三十七

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す