揺蕩う

あいつもほんと病気だな ページ13

「連れて帰るね。てか、奏は？」


「あー、女の子と帰った」


「まったく、あいつもほんと病気だな」


「最初はAの横に居たはずなんだけどね」




今ピーと苦笑いを零し合うと、Aの横にしゃがみ込んでその肩を揺する


掴んだ先がいつもより心做しか小さくなった気がして、

ちょっとだけ痛む心。



「A、帰るよ。迎え来たよ」


「全然起きないね」


「おーい、」







「…潰れちゃったの？」



後ろから聞こえたのは、バナさんの声で、
ちょうど帰ろうとしてる所だったのか、隣には彼女がぴったりとくっついてしゃがんでる俺らを見下ろした



「あー、…うん。大丈夫」



「…タクシー呼ぶ？」



「いや…Aがさ、きっとまた泣くから…」


だからバナさんは先に帰って大丈夫だよ。


そう言った俺に、驚いたように小さく目を見開いたバナさんと、不思議そうな顔をする今ピーと彼女。




こいつが、その姿を、

腕に絡みついたその子の細い腕を、

見てしまったら、

目が覚めてしまったら、



きっとまた泣くんだろうから。




だから、お願いだから、今はまだ目を覚まさないで、なんて。




「あー、…うん」


「先輩…？」


「ごめん、何でもない。先、帰ろっか」


じゃあね、って背中を向けたバナさんにヒラヒラと右手を上げる


そんな顔すんなら最初からちょっかいかけんなって言葉は飲み込んだ。

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