9 ページ11
「最初は口だけかと思ってたけど、近頃そうでもなさそうでさ、」
寂しいなんて、俺には言わない。Aはいつだって虫さんを一番に頼る。お兄ちゃんみたいで、お父さんみたいで、好きなんだよねえといつか笑っていたことを思い出す。
「結局は甘える相手がいないんだと思うんだよ。周りに気遣って、にこにこしながら色んなこと考えて立ち回って、その先に気を抜ける誰かがいないから、寂しいって言うしかないんじゃないかな」
そんな存在になりたいと、何度思ったことか。Aにとってのそれになれるなら、俺はなんだってするのに。
「…自分じゃダメだって顔をしてるね？」
「そりゃあ、ね」
「りょうくんが一番有力候補なのになあ」
「やめてよそんな根拠もないこと」
「根拠がないと動けないくらい、Aのことになると臆病だよねりょうくん」
もっと何も考えず近いちゃえば良いのに、てつやみたいに。そう言われても、できないものはできない。
Aを前にすると、自分がいかにちっぽけか思い知らされる。リスナーには、いつもニコニコしていてムードメーカーだとコメントされることも多いけど、そんなことは誰だってできる。Aは空気が悪くなるその一歩手前で、巧みに雰囲気を切り替える。気を遣わせてるな、と思う隙も与えないくらい自然に。
「すごいんだよ、Aは」
「うん」
「そんな簡単に近づけない」
「それはりょうくんがAを買い被りすぎだよ」
「…世界でいちばん幸せになってほしい」
「好きじゃん、それは」
「好きだよ」
珍しく俺がAへの思いを口にしたので、虫さんは目を真ん丸にして驚き、でもすぐに穏やかに笑った。
「Aに言ったら喜ぶと思うけどなあ」
「笑ってはくれるだろうね、そんで、きっとうまいことかわされるよ」
「でもりょうくん、それさえしてきてないんでしょ」
「困らせたくないからね」
「いいんだよ、好きならそれくらいしないと、伝わんないんだから」
いい子のままでいたって、Aは振り向いてくれないよ。虫さんが自信満々にそう言うもんだから、思わず笑った。
「あれ、僕わりと真面目に言ったつもりだったんだけど」
「うん、だから笑っちゃった」
「なんで！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 278人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
定期入れ(プロフ) - はるよさん» コメントありがとうございます！◎あのニコニコしたりょうくんに陰ながらめちゃくちゃやきもきされたい欲が滲み出た文になっちゃってます（ ; ; ）（笑） (2019年7月15日 15時) (
レス) id: 671b98a10b (このIDを非表示/違反報告)
はるよ(プロフ) - いつも楽しく拝見しております。私はりょうくん落ちを希望致します！過保護なりょうくん、、是非付き合ってほしいです！よろしくお願い致します。 (2019年7月14日 21時) (レス) id: 232a961ca6 (このIDを非表示/違反報告)
定期入れ(プロフ) - 怜さん» こちらこそありがとうございます！（＾Ｏ＾）◎そうなんです、りょうくん、正直めちゃくちゃ書きやすいんです（笑）コメント本当にありがとうございます！ (2019年7月11日 11時) (レス) id: 671b98a10b (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 定期入れさん» わざわざありがとうございます！ あの溺愛っぷりを見てるとりょうくん落ちがいいです…けど他の方が仰ってるようにともやんもみてみたい…笑 (2019年7月10日 20時) (レス) id: 291ffdfed4 (このIDを非表示/違反報告)
定期入れ(プロフ) - なさん» コメントありがとうございます！更新遅くて申し訳ないです（ ; ; ）ともやん推し嬉しいです◎ (2019年7月10日 9時) (レス) id: 671b98a10b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：定期入れ | 作成日時：2019年3月17日 17時
