夢を見た ページ42
夢を見たの…
私は眠っていて、
そんな私を優しく見つめてくれている紫耀。
私の頬や髪を撫でたり、
とても温かい眼差しで見てくれている。
そんな幸せな夢。
けれど、
急に寂しそうな顔をした紫耀が、
ふと呟くようにこう言ったの。
紫耀「…俺達、出会わなければ良かったんだよな。あの日、好きにならなければよかった。そうしたら、こんなつらい思いなんてしなかったのに…」
そう言って、
涙を流す紫耀。
そして、
消えていってしまった。
そんな事言わないで…
いやだよ…
そう言いたいのに、
行かないでと言いたいのに、
涙を流す紫耀を抱き締めたくても、
夢の中の私は何も気づかずに眠っている。
そんな光景を上からのアングルで、
まるでドラマか映画でも見ているような映像で、
ただ見る事しか出来ないの。
でもこの夢が妙にリアルで、
切なくて、
もどかしくて、
悲し過ぎるの…
すると、
紫耀「A？…A？起きて？大丈夫？」
そんな声とともに、
頬の温かい手の温もりで、
夢から覚めたの。
A「…ん」
目を開けると、
紫耀「どうしたの？泣いちゃってるじゃん。ビックリしたー。もしかして、怖い夢でも見たの？大丈夫？」
そう言いながら、
必死になって私の涙を拭いてくれる紫耀に、
抱き着いた。
紫耀「うわっ！どうしたのさー。笑」
A「出会わなければ良かったって思ってるの？私の事、好きにならなければよかった？」
一気にそう言う私に、
困ったような、
楽しんでいるかのような、
そんな声で、
紫耀「ちょっとー、どうしたの？笑」
笑いながら、
私を優しく引き離すと、
紫耀「ごめんね、笑って。何？出会わなければ？好きにならなければ？なんだそれ。安心して？そんな事思ってないよ？俺。思うわけ無いじゃん。Aと出会えてない俺の人生なんて、そんなの最悪じゃん。考えただけでも、イヤなんだけど。ってか、何なのこれ。何の話なの？あっ、もしかして、夢？」
A「うん。紫耀が泣きながら、そう言ってたの。で、消えちゃった。」
紫耀「マジ？Aの夢の中の俺、バカだなー。今度会ったら、バカだねって伝えておいて？」
A「フフフ。うん、言っておくね。」
笑った私に。
紫耀「可愛すぎる。」
紫耀に抱き締められながら、
もう無理だろうなと思っていた。
この先、
紫耀から離れなれない私がいるって、
そう気付いていた…
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年8月7日 1時
